「国技」と呼ばれる大相撲の頂点に立つ日本相撲協会の理事長。巨大組織を束ねるトップの給料は、一体どれほどの金額なのでしょうか?
実は、理事長の報酬は規定により明確に定められており、現役の横綱と比較すると意外な事実が見えてきます。
| 役職 | 推定年収 | 備考 |
|---|---|---|
| 理事長 | 約2,000万円 | 役員報酬+各種手当 |
| 横綱 | 4,500万円〜 | 基本給+懸賞金+優勝賞金 |
| 平年寄 | 約1,000万円〜 | 階級による変動あり |
この記事では、日本相撲協会の公開資料や規定に基づき、理事長の月収、年収、そして知られざる退職金事情までを徹底的に深掘りします。角界の「お金」のリアルを一緒に見ていきましょう。
日本相撲協会理事長の給料と年収の正体
日本相撲協会理事長の給料は、ブラックボックスではなく「役員及び評議員の報酬等並びに費用に関する規程」によって厳格に定められています。ここでは、その内訳と具体的な金額について解説します。
理事長の月額報酬は一律固定されている
相撲協会の規定によると、理事長を含む常勤役員の定例報酬(月給)は、一律で154万8,000円と定められています。これは理事長だけでなく、理事全員に適用されるベースとなる金額です。
かつては役職ごとに細かく基本給が異なっていた時期もありましたが、公益財団法人への移行や組織改革に伴い、透明性の高い報酬体系へと整備されました。この基本給だけで計算すると、年間のベース収入は約1,850万円となります。
ボーナスや手当を含めた総額
基本給に加え、理事長には特有の「手当」や「賞与」が加算されます。これらを合算することで、実際の年収が見えてきます。
- 本部勤務手当:月額50,000円(理事長特有の加算)
- 勤続手当:年寄としての勤続年数に応じ、月額数千円〜2万円程度
- 年度末手当(ボーナス):年1回、110万円(理事長の場合)
これらをすべて合計すると、理事長の年収は約2,050万円前後となります。一般企業の社長と比較すると「意外と少ない?」と感じるかもしれませんが、これは公益法人の規定に基づく適正な水準として設定されているためです。
なぜ理事長の給料は公開されているのか
相撲協会の収支や役員報酬が公開されている背景には、平成26年の公益財団法人認定があります。公益法人は高い透明性が求められるため、財務諸表や規定を一般に公開する義務があるのです。
これにより、かつては謎に包まれていた親方衆の懐事情も、ある程度ガラス張りになりました。私たち一般ファンでも公式サイトの資料を確認すれば、組織のお金の流れを知ることができるのです。
八角理事長のケースで考える
現在の八角理事長(元横綱・北勝海)の場合も、この規定通りの報酬が支払われていると考えられます。現役時代に数々の優勝を重ねた元横綱としての実績があっても、理事長としての給与は組織のルールに従います。
もちろん、現役時代の蓄えや、自身の部屋(八角部屋)の運営による収入(弟子育成の補助金等は部屋の経費となりますが)など、個人の資産背景は別です。あくまで「理事長としての給与」は、この約2,000万円という数字がリアルな実態です。
他の役員との格差はどれくらいか
理事長以外の「理事」や「副理事」の報酬はどうなっているのでしょうか。実は、基本となる月額報酬(154万8,000円)は理事長と同じ設定になっています。
差がつくのは主に「年度末手当」や「本部勤務手当」の部分です。例えば、理事の年度末手当は80万円と定められており、理事長の110万円より低く設定されています。役職の重責に比べて、金額面での差は極めて小さいのが相撲協会の特徴と言えるでしょう。
現役横綱と理事長の収入比較
角界のトップである理事長と、土俵のトップである横綱。収入面で比較すると、実は「雇われる側」である横綱の方が圧倒的に稼いでいるという逆転現象が起きています。
横綱の給料は青天井
横綱の月額基本給は約300万円と言われており、これだけで年収3,600万円に達します。理事長の年収約2,000万円を、基本給の時点ですでに大きく上回っています。
さらに横綱には、優勝賞金(1回1,000万円)、三賞、そして取組ごとの懸賞金(1本約6万円の手取り)が入ります。人気実力ともに兼ね備えた横綱であれば、年収1億円を超えることも珍しくありません。
なぜ力士の方が高給なのか
この収入格差には、明確な理由があります。力士は「個人事業主」としての側面が強く、選手としての寿命も短いため、現役期間に生涯賃金の多くを稼ぐ必要があるからです。
- 選手寿命:力士は30代半ばで引退、理事長は60代〜70代まで勤務
- リスク:怪我による引退リスクと常に隣り合わせ
- 興行価値:観客を呼び、収益を生み出す直接のスターは力士
一方、理事長や親方は、引退後の「セカンドキャリア」として、安定した給与を受け取る立場です。高額な報酬よりも、定年(65歳〜70歳)まで安定して働ける地位の保証という意味合いが強いのです。
親方になると収入は激減する
横綱・大関クラスの力士が引退して親方になると、収入はガクンと下がります。現役時代は億単位を稼いでいたとしても、親方になれば年収1,000万円〜2,000万円クラスの「給与所得者」になるからです。
そのため、現役時代にいかに資産を形成し、年寄名跡(年寄株)を取得する資金を残しておくかが、力士の人生設計において非常に重要になります。
一般の親方(年寄)の給料事情
理事長などの役員以外の、一般的な「平年寄」や「部屋付き親方」の給料についても見ていきましょう。彼らの給与もまた、協会の規定により階級別に定められています。
階級による給与の違い
親方の給料は、現役時代の最高位ではなく、親方としての「委員」「主任」「年寄」などの階級によって決まります。最も低い階級の「年寄」であっても、月給は約80万円前後が保証されています。
- 委員以上:月給100万円オーバー
- 主任・年寄:月給80万〜90万円程度
これに加えて、地方場所への出張手当や、部屋の力士育成に対する各種補助金(養成費など)が支給されます。ただし、養成費はあくまで「部屋の運営費」や「力士の食費」として使われるもので、親方の個人の懐に入る給料とは区別されます。
部屋持ち親方と部屋付き親方
自分の部屋を持つ「師匠(部屋持ち親方)」と、他の部屋に所属する「部屋付き親方」では、給料の額面自体は階級が同じなら変わりません。しかし、実質的な経済力には大きな差が生まれます。
部屋持ち親方は、後援会(タニマチ)からの支援や、所属力士が活躍した際の祝儀など、給料以外の収入ルート(および経費)が発生します。経営手腕が問われるポジションであり、成功すれば協会給与以上の豊かな生活が可能ですが、弟子の不祥事などのリスクも全責任を負うことになります。
定年までの安定収入としての魅力
サラリーマンの平均年収と比較すれば、平年寄の年収1,000万円超は十分に高給です。しかも、65歳の定年(再雇用で70歳)までこの水準が維持されることは、非常に大きな特権です。
だからこそ、引退間際の力士たちは必死になって「年寄株」を探します。株を取得できなければ協会に残れず、相撲以外の仕事で生計を立てなければならないからです。この「安定した身分」こそが、親方という職業の最大の価値と言えるでしょう。
知られざる退職金と「年寄株」の資産価値
給料(フロー)だけでなく、資産(ストック)の面からも相撲協会の懐事情を分析します。特に「退職金」と「年寄株」は、切っても切り離せない関係にあります。
相撲協会の退職金制度
親方衆にも退職金(養老金)が存在します。これは勤続年数や功績に応じて算出されますが、一般企業の退職金とは少し性質が異なります。
具体的な金額は非公開の部分が多いものの、数千万円単位になると推測されます。長年協会に貢献した理事長クラスであれば、相当額の功労金が上乗せされる可能性もありますが、これもすべて規定の範囲内で行われます。
年寄名跡(年寄株)という隠し資産
公式な給与や退職金以上に、角界のお金事情で重要なのが「年寄名跡(いわゆる年寄株)」の存在です。表向きには金銭による売買は禁止されていますが、実際には億単位の価値を持つ「譲渡可能な権利」として扱われてきた歴史があります。
親方が退職する際、後進に自分の名跡を譲渡することで、事実上の「私的な退職金」を得るケースが過去には常態化していました。現在は協会が管理を強めていますが、名跡の価値がゼロになったわけではありません。
理事長になるためのコストとリターン
理事長を目指すには、まず一門の支持を集め、理事選挙に当選しなければなりません。これには長い時間と人望、そして政治力が必要です。金銭的なメリット以上に、「相撲界の歴史に名を刻む」という名誉や権威が、理事長を目指す最大の動機となっています。
給料だけで見れば割に合わない激務かもしれませんが、協会人事権や予算執行権を握る権力は絶大です。それが、多くの親方が派閥争いを勝ち抜いてトップを目指す理由なのです。
まとめ:理事長の給料は責任の重さに対する対価
日本相撲協会理事長の給料事情について、最新の規定やデータに基づいて解説してきました。華やかな大相撲の舞台裏には、堅実でシビアなお金のルールが存在します。
最後に、今回のポイントをまとめます。
- 年収は約2,000万円:月額報酬は約155万円+各種手当やボーナスで構成される。
- 横綱よりは低い:現役トップの横綱の方が、基本給も総収入も圧倒的に高い。
- 安定性が魅力:力士のような不安定さはなく、定年まで高水準の給与が保証される。
- 透明性の向上:公益法人化により、報酬規定は一般にも公開されている。
理事長の給料は、単なる労働の対価ではなく、伝統文化を継承し守り抜く「責任料」とも言えます。土俵上の勝負だけでなく、こうした組織の仕組みを知ることで、大相撲の見方がまた一つ深まるのではないでしょうか。


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