弓取り式担当の力士は給料なし?特別手当の真実と過酷な裏側とは!

大相撲の本場所で、結びの一番が終わった後に土俵上で行われる「弓取り式」をご覧になったことがあるでしょうか。勝者の健闘を称えるこの儀式は、独特の所作と力強い弓さばきで観客を魅了しますが、実はこの役を務める力士の懐事情はあまり知られていません。彼らは特別な技術を持っているのだから、さぞかし高い給料をもらっているのだろうと想像する方も多いはずです。

しかし実際には、弓取り式を担当する力士の多くは「給料」という形での定期収入を得ていないという衝撃的な事実があります。華やかなスポットライトの裏側で、彼らはどのような待遇で、どのようなモチベーションを持って土俵に上がっているのでしょうか。

  • 弓取り式担当者の意外な階級と給与体系
  • 特別に支給される手当のリアルな金額
  • 名誉と引き換えに背負う過酷な責任

弓取り式の力士に給料は出る?手当の金額と収入の仕組み

弓取り式を任される力士は、土俵上で非常に目立つ存在であるため、高給取りの関取だと思われがちですが、実は給与体系は全く異なります。まずは、彼らが受け取るお金の正体と、プロの力士としての厳しい現実について、具体的な数字を交えながら掘り下げていきましょう。華やかな儀式の裏にある、意外とシビアな経済事情が見えてきます。

一般的にプロスポーツ選手のパフォーマンスには対価が支払われるものですが、相撲界の伝統的なしきたりは、現代の労働感覚とは少し異なる基準で動いています。ここでは「給料」「手当」「支援」という3つの側面から、弓取り力士の財布の中身を徹底的に分析します。

幕下以下の力士には月給が存在しない現実

大相撲の力士は「関取(十両以上)」と「養精(幕下以下)」に明確に区分されており、月々の給料が支給されるのは関取以上の力士だけです。弓取り式を担当するのは、原則として「幕下」の力士であるため、彼らには毎月の固定給というものが存在しません。つまり、基本給は「0円」というのが現実なのです。

彼らの収入源は、本場所ごとに日本相撲協会から支給される「場所手当」と、勝った際に支払われる奨励金などに限られています。幕下力士の場所手当は年間を通じて支払われるものではなく、あくまで場所ごとの支給となるため、生活は決して楽ではありません。弓取り式という大役を任されていても、この「無給」という身分は変わらないのです。

そのため、彼らは部屋での共同生活を送りながら、ちゃんこ番や掃除などの雑用もこなしつつ、土俵上の儀式を務めています。プロのアスリートでありながら、月給制ではないという環境下で、彼らは日々稽古と儀式の練習に励んでいるのです。

弓取り式担当者に支給される特別手当の金額

月給がない代わりに、弓取り式を務める力士には日本相撲協会から特別な「手当」が支給される仕組みになっています。この手当は、本場所の期間中に毎日務めることへの対価として支払われるもので、一般的には場所ごとにまとめて支給されることが多いようです。金額については諸説ありますが、決して生活が一変するような高額なものではありません。

過去の情報の分析や関係者の証言などを総合すると、弓取り式の手当は1場所あたり数万円から十数万円程度と言われています。日割り計算すれば数千円程度の手当ということになり、これだけで生計を立てることは到底不可能な金額です。あくまで、名誉ある役割に対する「心付け」や「交通費」程度の意味合いが強いと考えられます。

それでも、無給の幕下力士にとっては貴重な現金収入であり、モチベーションの一つになっていることは間違いありません。この手当を励みにしつつ、彼らは本業である相撲での出世を目指して、過密なスケジュールをこなしているのです。

懸賞金や勝利ボーナスとの関係性

本場所の取組で関取が勝利した際に手にする「懸賞金」は、1本あたり数万円が力士の懐に入りますが、弓取り式には懸賞金はかけられません。どれだけ見事な弓さばきを披露し、観客から万雷の拍手を浴びたとしても、その場で現金を受け取ることはないのです。弓取り式はあくまで「儀式」であり、勝負ではないため、懸賞金の対象外となります。

また、弓取り式を担当する力士も自身の取組を行いますが、儀式の準備があるため、取組のスケジュールは調整されることがあります。自身の相撲で勝てば幕下としての奨励金は出ますが、弓取り式自体が勝利ボーナスを生むわけではないため、直接的な大金獲得には繋がりません。華やかな化粧まわしをつけて登場する姿は関取に匹敵しますが、実入りという面では大きな差があります。

観客として見ていると、最後に登場する主役級の扱いのように感じますが、経済的な側面で見ると、あくまで「奉仕」に近い要素が強い役割だと言えます。

所属部屋や後援会からの臨時収入や支援

協会からの公的な手当とは別に、所属する相撲部屋の親方や、部屋を応援する後援会の方々から、個人的な祝儀や小遣いをもらえるケースはあります。弓取り式は部屋にとっても名誉なことであり、テレビ中継の最後に部屋の名前がアナウンスされるため、宣伝効果も期待できるからです。そのため、親方が労をねぎらって特別な計らいをすることもあるでしょう。

また、地方巡業などで弓取り式を行う際には、勧進元や地元の有力者から「おひねり」のような形で寸志が渡されることも考えられます。これらは定額の収入ではありませんが、薄給の幕下力士にとっては、生活を支える重要な臨時収入となります。人柄が良く、見事な弓さばきを見せる力士ほど、こうした周囲からの支援は厚くなる傾向にあります。

しかし、これもあくまで不確定な要素であり、安定した給料の代わりになるものではありません。結局のところ、実力で関取に上がり、自分の力で給料を勝ち取らなければならないという現実は変わりません。

弓取り力士の年収はどれくらいになるのか

これまでの情報を総合して、弓取り式を担当する幕下力士の年収を推測すると、非常に慎ましい金額であることが分かります。場所手当(年間6場所分)に加え、弓取り手当、勝ち星による奨励金を合わせても、一般的なサラリーマンの年収には届かないケースがほとんどでしょう。衣食住は部屋が保証してくれるため生活には困りませんが、自由に使えるお金は限られています。

もし彼らが関取(十両)に昇進すれば、年収は一気に1000万円クラスへと跳ね上がりますが、幕下のままではその10分の1程度ということも珍しくありません。弓取り式という重責を担いながら、経済的には厳しい環境に置かれているのが、多くの担当力士の現状です。だからこそ、彼らは「早く関取になって弓取りを卒業したい」と願い、稽古に励むのです。

この経済的な格差こそが、相撲界のハングリー精神の源であり、弓取り力士にとっても最大の原動力になっていると言えるかもしれません。

弓取り式を行う力士の選考基準と資格

そもそも、弓取り式を行う力士はどのようにして選ばれるのでしょうか。誰でも立候補できるわけではなく、そこには伝統に基づいた明確な基準と、実務的な適性が求められます。ここでは、階級の制限や所属部屋のルール、そして求められる身体能力など、選考の裏側にある条件を詳しく解説していきます。

選ばれることは名誉ですが、同時にそれは「まだ関取ではない」という証明でもあります。どのような条件を満たした力士が、あの華やかな土俵の最後を飾る資格を得るのか、3つのポイントに絞って見ていきましょう。

原則として幕下以下の力士が担当する理由

弓取り式は、原則として「幕下」の力士が担当するという不文律があり、これには相撲界の階級制度が深く関係しています。関取(十両以上)は一人前の力士として扱われ、付き人がつく身分ですが、弓取り式はあくまで「勝者の代理」として行う儀式的な役割とされています。そのため、まだ修行中の身である幕下以下の力士が務めるのが通例となっているのです。

もし担当していた力士が十両に昇進した場合は、原則として弓取り式の役目を後輩に譲り、卒業することになっています。これは「出世して弓取りを免除されることが名誉」という考え方が根底にあるためで、関取が弓取りを行うのは異例の事態です。ただし、怪我や急な引退などで後任がいない場合、例外的に関取が務めたケースも過去には存在します。

つまり、弓取り式に選ばれるということは、相撲の実力としては「あと一歩」の段階にある有望株であることの証でもあるのです。

横綱のいる部屋から選出される慣例

弓取り式を行う力士は、原則としてその場所の「横綱」がいる部屋から選出されるという慣例があります。これは、本来弓取り式が「勝った横綱に代わって弓を受け取る」という儀式に由来しているため、横綱の付き人や同部屋の力士が務めるのが自然だからです。横綱土俵入りを務めるような、信頼のおける力士が指名されることが一般的です。

もし横綱が不在の場所や、横綱の部屋に適任者がいない場合は、大関の部屋や、過去に実績のある部屋から選ばれることもあります。そのため、特定の部屋が代々弓取り式を担当するという「伝統枠」のようなものが生まれることも珍しくありません。部屋にとっても、毎日テレビに映る弓取り力士を輩出することは、大きなアピールポイントとなります。

選ばれた力士は、自分の部屋だけでなく、相撲協会全体を代表して儀式を行うことになるため、品格や態度も厳しくチェックされます。

重い弓を扱う技術と身体能力

弓取り式で使用される弓は見た目以上に重く、長さも2メートル近くあるため、これを美しく回すには相応の筋力と器用さが必要です。単に力が強いだけでなく、手首の柔軟性やリズム感、そして美しい所作を保つ体幹の強さが求められます。新しく担当になった力士は、先輩からマンツーマンで指導を受け、本場所の土俵に立つまでに猛特訓を重ねなければなりません。

風の強い屋外での巡業や、緊張感漂う本場所の土俵上でも、決して弓を落とさず完璧に演じ切る度胸も必須条件です。万が一弓を落としてしまった場合、手を使わずに足で拾い上げるという難しい作法もあり、あらゆる事態に対応できる技術が求められます。そのため、運動神経が良く、器用な力士が抜擢される傾向にあります。

見た目の優雅さとは裏腹に、あの数分間の儀式は全身の筋肉を酷使するハードな運動であり、日々の鍛錬なしには務まらない役割なのです。

名誉だけではない弓取り担当者の過酷な日常

テレビ中継で見ていると、弓取り式は華やかで誇らしい役割に見えますが、実際に担当する力士にとっては苦労の連続でもあります。毎日休むことなく土俵に上がり、完璧を求められるプレッシャーは想像を絶するものがあります。ここでは、華やかな舞台の裏にある、担当者にしか分からない過酷な日常と、彼らに与えられる数少ない特権について紹介します。

彼らは自分の相撲が終わった後も気が抜けず、結びの一番が終わるまで待機し続けなければなりません。肉体的にも精神的にも大きな負担がかかるこの役割には、どのような苦労と、それに見合うメリットがあるのでしょうか。

幕下でも大銀杏が結える唯一の特権

弓取り式を担当する力士に与えられる最大の特権は、本来なら関取(十両以上)しか許されない「大銀杏(おおいちょう)」を結えることです。大銀杏は一人前の力士の象徴であり、幕下以下の力士は通常、丁髷(ちょんまげ)しか結うことができません。しかし、弓取り式の際は儀式の格式を保つために、特別に大銀杏を結い、化粧まわしを締めることが許されています。

これは力士にとって憧れの姿であり、家族や故郷の人々に晴れ姿を見せられるという点で、大きなモチベーションになります。たとえ番付が幕下であっても、土俵上では関取と同じような風格で扱われる数分間は、彼らにとって至福の時間と言えるでしょう。この姿に憧れて、辛い役目を引き受ける力士も少なくありません。

ただし、これはあくまで「儀式のための特例」であり、普段の生活や本場所の取組では丁髷に戻るという、少し切ない現実もあります。

怪我をしても休めない「皆勤賞」の重圧

弓取り式には「代役」を立てにくいという特性があり、担当者は場所中の15日間、何があっても土俵に上がり続けなければなりません。自身の取組で怪我をしたり、体調を崩したりしても、簡単に休むことは許されないという無言の圧力が存在します。もちろん予備の担当者は存在しますが、急な交代は縁起が悪いともされ、基本的には一人の力士が千秋楽まで務め上げます。

相撲はコンタクトスポーツであるため、突き指や捻挫は日常茶飯事ですが、弓を回す手首や指を負傷した状態での演技は困難を極めます。それでもテーピングを隠し、痛みをこらえて笑顔で弓を回す姿は、まさにプロ根性の塊と言えるでしょう。この「皆勤」のプレッシャーは、精神的にも大きな負担となります。

15日間、毎日決まった時間に最高のパフォーマンスを発揮し続ける継続力は、並大抵の精神力では維持できないものなのです。

失敗が許されない儀式へのプレッシャー

弓取り式は神聖な儀式であるため、失敗、特に「弓を落とす」ということは最大のタブーとされています。もし本場所の土俵で弓を落としてしまえば、翌日の新聞やネットニュースで取り上げられるほどの不祥事として扱われることもあります。観客の視線が一点に集中する中で、絶対にミスが許されないという緊張感は、取組以上のものがあるかもしれません。

また、所作の一つ一つに厳格な決まりがあり、少しでも手順を間違えれば、親方や先輩から厳しい叱責を受けることになります。伝統を守るという重責を、まだ若い幕下の力士が背負うことになるため、そのストレスは計り知れません。場所が終わると体重が落ちてしまう担当者もいるほど、心身を削る役割なのです。

華麗なパフォーマンスの裏には、こうした恐怖心との戦いがあることを知ると、弓取り式を見る目がまた変わってくるはずです。

過去の弓取り力士たちと出世のジンクス

相撲ファンの間でまことしやかに囁かれる噂として、「弓取り式を務めると出世できない」というジンクスがあります。稽古時間が削られることや、満足感を得てしまうことが原因と言われますが、果たしてそれは真実なのでしょうか。ここでは、過去のデータや実例をもとに、このジンクスの信憑性と、実際に弓取りを経て大成した力士たちのエピソードを紹介します。

歴史を振り返れば、このジンクスを打ち破り、名力士へと成長した例も数多く存在します。弓取り式という経験が、力士のキャリアにどのような影響を与えるのか、興味深い事実関係を見ていきましょう。

「弓取りをすると出世しない」は本当か

「弓取り式を務めると関取になれない」という都市伝説は、古くから角界に存在しますが、これは必ずしも事実ではありません。確かに、弓取り式の稽古に時間を取られ、本業の相撲の稽古がおろそかになったり、疲労が蓄積したりして成績が低迷するケースはあります。また、弓取りとしての地位に安住してしまい、ハングリー精神が薄れることを懸念する声もあります。

しかし、統計的に見れば、弓取り式経験者が関取に昇進した例は数多くあり、中には横綱や大関にまで登り詰めた力士もいます。むしろ、弓取り式に選ばれるほどの器用さと足腰の強さは、相撲にとってもプラスの要素です。このジンクスは、有望な力士がなかなか芽が出ない時の「言い訳」として使われてきた側面が強いのかもしれません。

近年では、弓取り式を務めた後に十両昇進を果たす力士も増えており、この古いジンクスは徐々に過去のものになりつつあります。

弓取り経験のある有名横綱や大関たち

歴史を紐解くと、昭和の大横綱や人気大関の中にも、下積み時代に弓取り式を務めていた力士が存在します。例えば、第69代横綱・白鵬も、関取に昇進する直前の時期に、自身の部屋の横綱である朝青龍の弓取りを務めた経験があると言われています(公式な本場所担当ではないものの、巡業等での経験)。また、古くは横綱・安芸ノ海などが弓取りの名手として知られていました。

彼らは弓取り式で培ったバランス感覚や足腰の強さを相撲に活かし、見事に出世の階段を駆け上がりました。また、土俵度胸がついたことで、大一番でも動じない精神力が養われたという側面もあるでしょう。このように、弓取り式は決して「出世の墓場」ではなく、使い方次第では「飛躍のステップ」になり得るのです。

偉大な先輩たちの足跡は、現在弓取りを務める若手力士たちにとって、大きな希望と目標になっています。

引退後のセカンドキャリアへの影響

弓取り式を務めた力士は、その知名度と特技を活かして、引退後もユニークな活躍をすることがあります。例えば、相撲甚句(すもうじんく)の歌い手として活動したり、相撲料理店を開いて店内で弓取りを披露したりと、現役時代の経験が武器になるケースです。ファンにとっても、あの時の弓取り力士に会えるというのは嬉しいものです。

また、相撲協会の裏方として残り、若手への指導や協会の運営に携わる際にも、弓取り式で培った礼節や責任感は高く評価されます。たとえ関取になれなかったとしても、相撲界の伝統を守った功労者として、多くの人々からリスペクトされる存在であり続けます。その経験は、力士人生における決して色褪せない勲章となるのです。

一瞬の輝きのために青春を捧げた彼らの努力は、形を変えてその後の人生を支える財産となっているのです。

まとめ:弓取り力士の給料はプライスレスな名誉と共に

ここまで、弓取り式を担当する力士の給料事情と、その役割の重さについて解説してきました。彼らの多くは無給の幕下力士であり、金銭的な報酬は「場所ごとの手当」という形でわずかに支給されるのみです。決して割の良い仕事ではありませんが、それでも彼らが懸命に弓を振るうのは、選ばれし者だけが立てる神聖な土俵への誇りと、将来への希望があるからです。

大銀杏を結い、満員の観客から拍手を浴びる経験は、何物にも代えがたい財産です。次に大相撲観戦をする際は、勝負の行方だけでなく、一日の最後を締めくくる弓取り力士の姿にもぜひ注目してみてください。その華麗な舞の裏にある、彼らの汗と努力、そして相撲への情熱を感じ取ることで、土俵の景色がより一層味わい深いものになるはずです。

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