大相撲の土俵で激しくぶつかり合う力士たちですが、その懐事情は番付によって「天と地」ほどの差があることをご存知でしょうか。特に三段目という地位は、プロの入り口を抜けたものの、まだ関取と呼ばれる高給取りには届かない厳しいポジションです。華やかな化粧まわしとは無縁の世界で、彼らは一体どのようにお金を稼ぎ、生活しているのでしょうか。
多くの相撲ファンが気になる「三段目の給料」について、そのリアルな数字や生活実態を深掘りしていきます。厳しい階級社会の現実を知ることで、土俵上の必死な姿がより一層胸に響くはずです。
- 三段目力士に月給が存在しない理由
- 具体的な場所手当の金額と年収試算
- 関取との待遇格差とハングリー精神
三段目の給料は0円?収入の仕組みとリアルな金額
結論から申し上げますと、三段目の力士に毎月支払われる「給料(月給)」は存在しません。彼らは日本相撲協会から給与を受け取る労働者ではなく、あくまで修行中の「養成員」として扱われるからです。ここでは、三段目力士がどのように収入を得ているのか、その具体的な仕組みと金額について詳細に解説します。
月給がない代わりに支給される手当や、勝利した際に得られる報奨金など、意外と知られていない収入源が存在します。厳しい勝負の世界で生きる彼らの財布事情を、具体的な数字を交えて紐解いていきましょう。
月給制は十両以上の関取だけの特権
大相撲の世界では、月給が支給されるのは「関取」と呼ばれる十両以上の力士に限られています。三段目は幕下、三段目、序二段、序ノ口と続く養成員の一つであり、プロ野球で言えば二軍や育成選手に近い存在ですが、給与体系はさらにシビアです。
関取になれば月収100万円以上が保証されますが、三段目の時点ではその権利がありません。この明確な線引きこそが、力士たちが死に物狂いで勝ち越しを目指し、番付を上げようとする最大のモチベーションになっています。
収入の柱となる「場所手当」の詳細
月給がない三段目力士にとって、生活の糧となるのが「場所手当」と呼ばれる支給金です。これは本場所ごとに支給されるもので、年に6回ある場所のたびに相撲協会から手渡されます。
現在の規定では、三段目の場所手当は1場所につき約16万2000円程度とされています。これは2ヶ月に1回の収入となるため、月換算すると約8万円程度という計算になり、一般社会のアルバイト収入よりも低い水準と言えるでしょう。
勝ち星で稼ぐ「奨励金」の仕組み
固定の場所手当に加えて、本場所での成績に応じた「奨励金」も重要な収入源です。本場所では7番相撲を取りますが、勝ち越した場合にはその勝ち星に応じて数千円程度の手当が加算される仕組みがあります。
また、三段目で優勝した場合には優勝賞金として30万円が支給されますが、これは約90名いる三段目力士の中でたった1人しか手にできない狭き門です。日常的な収入として計算できるものではなく、あくまでボーナス的な要素が強いと言えます。
髪結いや衣服のための補助金事情
力士には髷(まげ)を結うための「整髪費」や、着物などのための補助費も支給されます。三段目の場合、場所手当とは別に2万5000円程度の補助が支給されることがありますが、これも微々たる金額です。
鬢付け油や着物、浴衣などの手入れにはお金がかかるため、これらの補助金は右から左へと経費として消えていくのが現実です。力士としての身だしなみを整えるだけでも、彼らの収入からは大きな出費となります。
三段目力士の推定年収を試算
これまでの手当や補助金をすべて合計して、三段目力士の年収を試算してみましょう。場所手当(約16万円×6回)に加え、各種補助金を合わせても、年間の総支給額は100万円から120万円程度に留まります。
現代の日本において、年収100万円強で生活することは非常に困難ですが、彼らには「衣食住」が保証されているという特殊事情があります。それでも、自由に使える現金がいかに少ないかという事実は、相撲界の厳しさを如実に物語っています。
衣食住は保証されるが自由はない生活実態
年収100万円程度でどのように生活しているのかと疑問に思う方も多いでしょうが、力士は基本的に相撲部屋での共同生活を送ります。部屋での生活には家賃や食費がかからないため、最低限の生活は保障されていると言えます。
しかし、その代償としてプライベートな空間や時間は制限され、徹底した集団生活と規律が求められます。ここでは、お金を使わずに生きる三段目力士の生活スタイルと、その裏にある不自由さについて解説します。
家賃と食費がかからない部屋制度
相撲部屋に所属している限り、力士は部屋の大広間で寝起きし、ちゃんこ番が作る食事を毎日食べることができます。この「衣食住の保証」があるからこそ、わずかな場所手当だけでも相撲に専念することが可能になっています。
大食漢である力士の食費は膨大ですが、それは後援会からの差し入れや親方の尽力によって賄われています。三段目力士は、食べることに困ることはありませんが、好きなものを好きな時に食べる自由までは持っていません。
大部屋での共同生活とプライバシー
三段目以下の力士には個室が与えられず、数十人が一つの大広間で雑魚寝をするのが一般的です。自分のスペースは布団一枚分しかなく、プライバシーは皆無に等しい環境で生活を送らなければなりません。
いびきや歯ぎしり、生活音が常に聞こえる環境では、精神的なタフさも求められます。関取になれば個室が与えられるため、この大部屋生活からの脱出もまた、彼らが昇進を目指す大きな動機の一つとなっています。
雑用とちゃんこ番に追われる日々
三段目力士は、稽古以外にも多くの雑用をこなさなければなりません。早朝からの掃除、買い出し、ちゃんこ作り、関取の身の回りの世話など、一日の大半は「仕事」ではなく「奉仕」で埋め尽くされています。
これらの雑用は修行の一環とされていますが、肉体的にも精神的にも大きな負担となります。自分の稽古時間を確保するために、いかに効率よく雑用をこなすかも、出世するための重要なスキルと言えるでしょう。
天国と地獄と呼ばれる関取との決定的格差
相撲界ほど、階級による待遇の差が露骨な世界は他にないかもしれません。三段目と、その二つ上の階級である十両(関取)との間には、収入だけでなく扱いにおいても「人間と神様」ほどの違いがあると言われています。
この格差は、力士たちに「絶対に強くなる」という強烈な飢餓感を植え付けるシステムでもあります。ここでは、三段目力士が日々見せつけられる、残酷なまでの関取との待遇差について具体的に見ていきましょう。
年収10倍以上の圧倒的な経済格差
先述した通り三段目の年収は約100万円ですが、十両に昇進すると年収は一気に1500万円近くまで跳ね上がります。月給だけで110万円が支給され、さらにボーナスや懸賞金も加わるため、その差は10倍どころではありません。
たった一つの番付の違いで、生活水準が劇的に変わるこのシステムは、まさに完全実力主義の象徴です。三段目の力士たちは、目の前で贅沢な暮らしをする関取を見ながら、いつか自分もその地位に就くことを夢見て歯を食いしばります。
付け人がつくか、付け人になるか
関取には身の回りの世話をする「付け人」がつきますが、その付け人を務めるのが幕下以下の力士、つまり三段目たちです。兄弟子であっても、番付が下であれば関取の荷物持ちやお風呂の世話、背中流しなどをしなければなりません。
昨日まで対等に話していた同期が関取になれば、その瞬間から敬語を使い、世話をする側に回ることもあります。この屈辱と羨望が入り混じる複雑な感情こそが、土俵上での爆発的なパワーに変わるのです。
移動や服装に見る明確な身分差
移動手段や服装にも明確なルールが存在します。関取はタクシーや新幹線での移動が許されますが、三段目は基本的に公共交通機関を利用し、新幹線でも自由席しか座れないなどの暗黙の了解がある場合も多いです。
服装に関しても、三段目は冬でもコートの着用が許されず、薄手の着物や浴衣で過ごさなければなりません。雪駄(せった)の音を響かせて寒空の下を歩く姿は粋に見えますが、本人たちにとっては骨身に染みる寒さとの戦いでもあります。
給料以外でどう凌ぐ?三段目の懐事情の裏側
公的な手当だけでは、いくら衣食住が保証されているとはいえ、若者の遊びや個人的な買い物には不十分です。スマートフォン代や休日の娯楽費など、現代の力士にはそれなりの出費も必要になります。
では、彼らはどのようにして不足分を補っているのでしょうか。公式には語られないものの、相撲界独自の「互助システム」や、後援者との関係性の中に、彼らが生き抜くための知恵と文化が隠されています。
兄弟子や関取からのお小遣い
相撲部屋には、関取が勝った際や場所後に、付き人や下位の力士に「お小遣い」を渡す習慣があります。これは「ご祝儀」や「寸志」とも呼ばれ、三段目力士にとっては非常に貴重な臨時収入となります。
気前の良い関取の付き人になれば、それだけで生活が潤うこともあり、人間関係の構築も重要な処世術です。もちろん、これらはあくまで関取の好意によるものであり、当然もらえるものとして期待することは許されません。
谷町(タニマチ)からの個人的な支援
有望な若手力士には、個人的に応援してくれるスポンサー、通称「タニマチ」がつくことがあります。食事に連れて行ってもらったり、小遣いをもらったりすることで、経済的な助けを得るケースは少なくありません。
ただし、三段目の時点で太いタニマチがつくのは、将来の横綱・大関候補と目されるような一部の逸材に限られます。多くの力士は、部屋全体のタニマチからの差し入れを分け合う形で恩恵を受けています。
現代ならではの節約と工夫
最近の若手力士は、スマートフォンを駆使してポイ活をしたり、格安SIMを利用したりと、現代的な節約術を取り入れています。外出時もお金のかからない過ごし方を選ぶなど、限られた資金の中でやりくりをしています。
また、実家からの仕送りを受けている力士もゼロではありませんが、一人前の男として家を出た手前、親には頼りたくないというプライドを持つ者も多いです。その葛藤の中で、彼らは精神的にも自立していきます。
厳しい現実を超えて目指す未来とキャリア
三段目の待遇がいかに厳しいかを見てきましたが、それでも毎年多くの若者がこの世界に飛び込んできます。それは、リスクを冒してでも掴み取りたい「夢」が土俵にはあるからです。
厳しい環境は、彼らを力士としてだけでなく、一人の人間としても大きく成長させます。ここでは、三段目という地位を通過点として、彼らがどのような未来を描き、そして引退後はどうなっていくのかを解説します。
関取になれる確率は氷山の一角
現実として、入門した力士全員が関取になれるわけではありません。関取になれるのは全利子のうち約1割程度と言われており、残りの9割は最高位が幕下以下で引退していきます。三段目で終わる力士も非常に多いのが実情です。
この厳しい競争率は、どのプロスポーツと比較しても遜色のない狭き門です。だからこそ、その壁を突破した関取は尊敬を集め、引退後も「元関取」としての肩書きが人生を支えることになるのです。
引退後のセカンドキャリア問題
三段目で引退した場合、相撲協会に残ることは難しく、多くの場合は一般社会に再就職することになります。ちゃんこ店などの飲食業や、介護職、整体師など、身体を使う仕事を選ぶ元力士が多い傾向にあります。
最近では相撲協会もセカンドキャリア支援に力を入れており、パソコン教室や資格取得のサポートを行っています。厳しい修行で培った礼儀や忍耐力は、一般社会でも高く評価される武器となります。
それでも土俵に上がり続ける理由
金銭的な待遇だけを見れば、三段目の生活は割に合わないように思えるかもしれません。しかし、彼らが土俵に上がり続けるのは、お金以上の価値を相撲に見出しているからです。
満員の国技館で浴びる歓声、一瞬の勝負に勝った時の高揚感、そして仲間との絆。これらの経験は、他のどのような仕事でも得られない財産です。彼らは今日も、一攫千金の夢と誇りを胸に、まわしを締めて稽古場に向かいます。
まとめ
三段目の給料事情について、具体的な金額から生活の裏側まで詳しく解説してきました。月給0円、年収約100万円という数字は、現代社会においては衝撃的な少なさですが、衣食住の保証と「関取になれば一攫千金」という明確なドリームが彼らを支えています。
今回の記事で押さえておきたいポイントは以下の通りです。厳しい現実を知ることで、大相撲観戦の視点も少し変わるのではないでしょうか。
- 三段目には月給がなく、年6回の場所手当(1回約16万円)が主収入
- 年収は約100万円〜120万円程度で、一般のアルバイト以下
- 衣食住は部屋で保証されるが、大部屋生活でプライバシーは皆無
- 関取(十両以上)との年収差は10倍以上あり、待遇格差も激しい
テレビ中継の早い時間に登場する三段目の力士たちは、まさに今、人生をかけたハングリーな戦いの真っ只中にいます。彼らが必死に相撲を取る姿には、金銭的な厳しさを乗り越えようとする強い意志が込められています。これからは、土俵入りする前の呼び出しや、彼らの表情にも注目して応援してみてください。


コメント