秋の爽やかな風が吹き始める季節になると、大相撲ファンの心は「秋巡業」へと向かいます。本場所の張り詰めた緊張感とは一味違う、リラックスした力士たちの素顔や伝統芸能を楽しめるのが地方巡業の醍醐味です。
多くのファンがこの時期を待ちわびていますが、初めて参加する方にとってはチケットの取り方や当日の流れなど、分からないことも多いのではないでしょうか。この記事では、大相撲秋巡業を120%楽しむための情報を余すところなくお伝えします。
- 巡業ならではの催し物「初切」や「相撲甚句」の魅力
- 力士と間近で触れ合えるチャンスとマナー
- チケット入手や当日の持ち物に関する実践的なアドバイス
大相撲秋巡業の基礎知識と最大の魅力
大相撲秋巡業は、毎年10月頃に全国各地で開催される相撲の興行であり、多くのファンに親しまれています。本場所が行われない地域を回り、相撲道の普及と地域振興を目的としているため、地元の方々との交流が盛んに行われるのが特徴です。
開催地は年によって異なりますが、関東近郊から中部、近畿地方などを回るコースが一般的によく見られます。まずは秋巡業の基本的な概要と、本場所にはない独自の魅力を5つのポイントに分けて詳しく解説していきましょう。
開催時期とスケジュール感
秋巡業は、9月の東京場所(秋場所)が終わり、11月の福岡場所(九州場所)が始まるまでの期間に設定されます。具体的には10月の初旬から下旬にかけて、約3週間から1ヶ月程度の日程で各地を転戦します。
移動日はありますが、興行自体はほぼ毎日行われるため、力士たちは過密なスケジュールの中で全国を回ることになります。各開催地での興行は基本的に「1日完結」であり、朝の開場から夕方の打ち出しまでイベントが目白押しです。
地元の体育館やアリーナが会場となることが多く、朝8時頃から公開稽古が始まり、午後3時頃に弓取式で終了します。1日を通して相撲漬けになれるため、ファンにとっては非常に満足度の高いイベントといえるでしょう。
本場所との決定的な違い
本場所は力士の番付(地位)を決める真剣勝負の場ですが、巡業はあくまでファンサービスと普及が主目的です。そのため、会場全体に漂う空気感が非常に和やかで、力士たちの表情もどこか柔らかい印象を受けます。
取組自体も行われますが、勝敗が番付に影響しない「花相撲」と呼ばれる形式であるため、怪我を避けるような動きも見られます。しかし、その分だけ大技や珍しい技が飛び出すこともあり、純粋に技の応酬を楽しむことができるのです。
また、行司や呼出しといった裏方さんたちも、観客との距離が近く、気軽に手を振り返してくれることもあります。ピリピリした勝負の世界とは異なる、大相撲ファミリーとしての温かさを感じられる場です。
力士との距離感と触れ合い
巡業最大にして最高の魅力は、なんといっても憧れの関取たちと間近で触れ合えるチャンスがあることです。会場の入り口や花道周辺では、タイミングが合えばサインをもらったり、記念撮影に応じてもらえることがあります。
特に支度部屋から土俵へ向かう通路は、力士の大きさを体感できる絶好のスポットとして知られています。鬢付け油の甘い香りが漂い、目の前を巨大な力士が通り過ぎる迫力は、テレビ画面では絶対に味わえません。
ただし、近年は感染症対策や警備の観点から、接触可能なエリアやルールが厳格化されている場合もあります。現地の係員の指示に従い、節度を持って交流を楽しむ姿勢がファンには求められます。
公開稽古の迫力と見どころ
巡業の朝は早く、開場と同時に行われる「公開稽古」は見逃せないコンテンツの一つです。本場所では見ることのできない、幕下以下の力士から横綱・大関陣までの申し合い稽古を、生で見ることができます。
特に注目すべきは、異なる部屋の力士同士が肌を合わせる「連合稽古」のような光景が見られる点です。ライバル同士が土俵際でどのような会話を交わし、どのように技術を高め合っているのかを観察できます。
朝の早い時間帯は観客もまだ少ないため、土俵に近い席でじっくりと稽古を見学できるチャンスでもあります。力士の息づかいや体がぶつかり合う鈍い音を、静寂の中で堪能できる贅沢な時間です。
地域ごとの特色と歓迎ムード
地方巡業では、開催地ごとに異なる「ご当地力士」への声援や歓迎ムードも大きな見どころです。その出身地やゆかりのある力士が登場すると、会場のボルテージは最高潮に達し、温かい拍手に包まれます。
また、会場の外では地元の特産品を使ったグルメ屋台が出店していることも多く、相撲と一緒にお祭り気分を味わえます。地域全体が相撲一行を歓迎している雰囲気は、その土地ならではの思い出になるでしょう。
勧進元(主催者)によっては、オリジナルの記念品やご当地弁当が販売されることもあります。相撲観戦だけでなく、その土地の文化や食を楽しむことも、秋巡業の楽しみ方の一つと言えます。
本場所では見られない巡業限定の企画
巡業には、勝負論に徹する本場所では決して実施されない、エンターテインメント性の高いプログラムが多数用意されています。これらは江戸時代から続く伝統的な「相撲の余興」であり、相撲の文化的な深さを知ることができます。
笑いあり、感動ありの演目は、相撲のルールを詳しく知らない初心者や子供でも十分に楽しめる内容になっています。ここでは、特に人気の高い3つの巡業限定プログラムについて紹介します。
爆笑必至の「初切(しょっきり)」
初切とは、相撲の禁じ手(反則技)を面白おかしく紹介する、コントのような見世物です。行司と二人の力士が登場し、スリッパで叩いたり、口に水を含んで吹き出したりと、コミカルな演技を披露します。
普段は厳格な表情をしている力士たちが、この時ばかりはお茶目な一面を全開にして観客を笑わせます。しかし、その動きの中には高度な受け身や身体能力が必要とされる場面もあり、プロの技術に裏打ちされた芸です。
内容はその時々の流行りネタを取り入れるなど、ペアによってアレンジが異なるため、何度見ても飽きることがありません。会場中が大きな笑いに包まれる、巡業で最も人気のあるコーナーの一つです。
美声に酔いしれる「相撲甚句」
相撲甚句は、化粧廻しをつけた力士たちが土俵上で輪になり、中央の一人が独唱する伝統的な歌です。歌詞は「ハァ〜ドスコイ、ドスコイ」という合いの手とともに、力士の悲哀や世相、地元の名所などを七五調で歌い上げます。
美声自慢の力士が担当することが多く、その伸びやかな歌声はマイクなしでも会場の隅々まで響き渡ります。歌詞の内容をじっくり聞くと、ユーモアに富んだものからホロリとさせるものまで様々で、非常に奥深いです。
土俵上の力士たちが手拍子や足踏みでリズムを取る姿は、日本の伝統芸能としての相撲の側面を強く感じさせます。観客も一緒になって手拍子を送り、会場に一体感が生まれる瞬間でもあります。
伝統技を披露「太鼓打分」と「髪結実演」
呼出しによる「太鼓の打分け」や、床山による「髪結実演」も、巡業ならではの貴重なプログラムです。太鼓には「寄せ太鼓」や「跳ね太鼓」など意味の異なる打ち方があり、その解説を聞きながら音色の違いを楽しめます。
髪結実演では、モデルとなる人気力士が土俵中央に座り、床山が手際よく大銀杏を結い上げる過程を披露します。普段は見ることのできない職人技を、解説付きで間近に見学できる貴重な機会です。
特に髪結実演では、モデルとなった力士へのインタビューが行われることもあり、リラックスしたトークが聞けるかもしれません。裏方さんの技術がいかに大相撲を支えているかを知ることができる、教育的な側面もあります。
チケット購入方法と開催地の傾向
秋巡業を観戦するためには、当然ながらチケットを入手する必要がありますが、本場所とは販売ルートや座席の考え方が少し異なります。人気の開催地や良い席はすぐに売り切れてしまうため、早めの情報収集が不可欠です。
開催地は毎年変わるため、自分の住んでいる地域の近くに来るかどうか、日本相撲協会の公式サイト等でこまめにチェックする必要があります。ここではチケット入手の基本的な流れと座席選びのポイントを解説します。
チケットの販売ルートと発売時期
巡業のチケットは、開催日の約2〜3ヶ月前から販売が開始されることが一般的です。「チケット大相撲」などの主要プレイガイドのほか、地元の新聞社やテレビ局、市民会館などで販売されることもあります。
確実にチケットを入手するためには、日本相撲協会の巡業スケジュール発表を見逃さないことが重要です。夏頃には秋巡業の大まかな日程が発表されるため、そこから各主催者の公式サイトへアクセスして詳細を確認します。
また、「タマリ席」と呼ばれる土俵に近い席は非常に人気が高く、先行抽選で完売することも珍しくありません。良い席を確保したい場合は、ファンクラブへの加入や、発売初日の待機など、事前の準備が必要です。
座席の種類と選び方のコツ
巡業の座席は、体育館の床に座布団を敷く「タマリ席」「マス席」と、スタンドやひな壇にある「イス席」に大別されます。力士の迫力を肌で感じたいならタマリ席がおすすめですが、長時間あぐらで座るのが辛い場合はイス席が無難です。
タマリ席は土俵に近い分、力士が倒れ込んでくるリスクがあるため、未就学児の観戦が制限される場合があります。一方、2階のイス席は全体を見渡すことができ、リラックスして食事や撮影を楽しめるメリットがあります。
また、巡業ならではの「お土産付きチケット」が販売されることも多く、記念座布団やお弁当がセットになっています。手ぶらで観戦に行きたい方や、記念品を確実に手に入れたい方は、セット券の購入を検討すると良いでしょう。
地方開催ならではの注意点
地方の体育館やアリーナは、国技館のような相撲専用の施設ではないため、設備面で不便を感じることがあるかもしれません。トイレの数が少なかったり、土足禁止でスリッパが必要だったりと、会場ごとのルール確認が必要です。
駐車場に関しても、会場によっては台数が限られており、公共交通機関の利用が推奨されるケースが大半です。地方だから車で行けると安易に考えず、シャトルバスの有無や近隣のコインパーキング情報を調べておきましょう。
また、会場によっては冷暖房の効きが悪い場合もあるため、10月の気候に合わせた服装の調整が大切です。羽織るものを一枚持参するなど、自分自身で快適な観戦環境を作る準備をしておくことをお勧めします。
当日を快適に過ごす持ち物とマナー
楽しい一日を過ごすためには、事前準備と現地でのマナー遵守が欠かせません。長丁場のイベントであるため、必要なものを忘れると不便な思いをすることになりますし、周囲への配慮が欠ければトラブルの原因にもなります。
ここでは、巡業観戦をより快適にするための「持ち物リスト」と、ファンとして知っておくべき「観戦マナー」について解説します。これらを押さえておけば、初心者でも安心して当日を迎えることができるでしょう。
必須アイテムと便利グッズ
まず絶対に持っていくべきなのは、チケットと、土足厳禁会場用の「スリッパ」や「上履き」です。また、長時間座ることになるため、お尻の痛みを軽減する「マイ座布団」やクッションがあると疲労度が全く違います。
サインをもらいたい場合は、色紙と太めの黒マジックを持参するのが鉄則です。会場でも色紙が販売されていることがありますが、売り切れる可能性もあるため、自分で用意していくのが確実でしょう。
カメラや双眼鏡も観戦の楽しみを広げてくれるアイテムですが、フラッシュ撮影は禁止されていることがほとんどです。バッテリーの予備や、望遠レンズなど、撮影目的に合わせた機材準備も忘れずに行いましょう。
飲食に関するルールと楽しみ方
巡業会場では、基本的にお弁当や飲み物の持ち込みが可能な場合が多いですが、会場によっては制限があるため確認が必要です。会場内でもお弁当や軽食、ビールなどが販売されており、相撲を見ながらの食事は格別の味です。
ただし、ゴミは持ち帰るのが基本マナーとなっている会場も増えています。ゴミ袋を持参し、自分の出したゴミは責任を持って処理することで、次に使う人や運営側への配慮を示しましょう。
また、アルコールが入ると声が大きくなりがちですが、周囲の迷惑にならないよう節度を守る必要があります。特に稽古中や土俵入りの際など、静かに見守るべき場面では飲食を控えるなどの配慮がスマートです。
撮影や交流時のマナー
力士を見かけると嬉しくてすぐに駆け寄りたくなりますが、まずは力士の状況を観察することが大切です。移動中やトイレ休憩の際など、急いでいる時に無理に引き止めるのはマナー違反となります。
写真撮影をお願いする際は、必ず一言「お願いします」と声をかけ、許可を得てから撮影するようにしましょう。無断で至近距離から撮影したり、体を勝手に触ったりする行為は絶対に慎まなければなりません。
稽古中の力士に対して大声で名前を呼んだり、サインを求めたりするのも厳禁です。力士は真剣に身体を動かしており、集中を乱す行為は怪我につながる恐れもあるため、静かに見守るのが真のファンの姿です。
力士と触れ合うための戦略的ポイント
巡業に行くからには、やはり贔屓の力士と少しでも交流したいと思うのがファン心理です。闇雲に会場を歩き回るのではなく、力士の動線や時間帯を把握して動くことで、遭遇率を上げることができます。
もちろん、力士の負担にならない範囲で行動することが大前提ですが、知っていると得をする「戦略」は存在します。ここでは、サインや写真撮影のチャンスを掴むための具体的なポイントを紹介します。
狙い目の時間帯と場所
最も交流のチャンスが多いのは、朝の稽古終了後からお昼休憩にかけての時間帯です。稽古を終えた力士たちが支度部屋やバスに戻るタイミングは、比較的リラックスしており、ファンサービスに応じてもらいやすい傾向があります。
また、会場入りのタイミングも狙い目ですが、朝8時の開場よりも前に力士が入ることも多いため、早起きが必要です。逆に、全取組終了後の出待ちも可能ですが、混雑しやすく、力士も疲れているため対応が難しい場合があります。
場所としては、支度部屋からトイレや売店に向かう通路、または会場の外にある喫煙所付近などが遭遇スポットです。ただし、立ち入り禁止区域には絶対に入らないよう、係員の指示や掲示板を必ず確認してください。
サインをもらうための準備
サインをお願いする際は、マジックのキャップを外して、色紙と一緒にすぐに渡せる状態で待機するのがコツです。力士は手が大きいため、細いペンよりも「マッキーの太字」のような太いペンの方が書きやすく喜ばれます。
色紙以外にも、Tシャツやタオルにサインを求めるファンもいますが、布製品は書きにくいため断られることもあります。力士が書きやすいように、下敷きとなるクリップボードなどを挟んで差し出す配慮があるとスムーズです。
また、人気力士の周りにはすぐに人だかりができるため、割り込みや押し合いは厳禁です。整列して順番を待つ、あるいは今回は諦めて遠くから手を振るなど、譲り合いの精神を持つことが大切です。
握手や写真撮影のコツ
握手をお願いする場合は、力士の手を強く握りすぎないよう、優しく添える程度にするのがマナーです。力士の手は商売道具であり、怪我をさせてしまっては大変ですので、敬意を持って触れさせてもらいましょう。
ツーショット写真を撮りたい場合は、自撮りでは画角が難しいため、近くにいるファン同士で撮り合うのがおすすめです。「撮りましょうか?」と声をかけ合うことで、ファン同士の交流も生まれ、気持ちよく撮影ができます。
最近ではSNSにアップするファンも多いですが、他の観客の顔が写り込んでいないかなど、プライバシーへの配慮も必要です。撮影した写真は個人の楽しみの範囲で留めるか、マナーを守って公開するようにしましょう。
まとめ
大相撲秋巡業は、本場所にはないリラックスした雰囲気の中で、力士たちの人間味あふれる魅力に触れられる貴重な機会です。初切や相撲甚句といった伝統芸能を楽しみ、目の前で繰り広げられる公開稽古の迫力に圧倒される一日は、忘れられない思い出になるでしょう。
チケットの入手は早めの行動が鍵となりますが、準備さえ整えれば、初心者でも十分に楽しむことができます。マナーを守って力士と交流し、地域のグルメや歓迎ムードも併せて満喫することで、相撲観戦の奥深さをより一層感じられるはずです。
ぜひ今年の秋は、近くの会場で開催される巡業に足を運び、大相撲の新たな魅力を発見してみてください。最新の日程やチケット情報は、日本相撲協会の公式サイトで随時更新されますので、こまめなチェックをお忘れなく。


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