相撲のまわし色に隠された秘密とは?関取と幕下の決定的な違い!

大相撲の土俵上で、力士たちが身につける「まわし」。一見するとただの装具に見えますが、その色や素材には、階級社会である相撲界の厳格な掟と、力士それぞれの個性が色濃く反映されていることをご存知でしょうか。

実は、まわしの色が自由に選べるのは限られた地位の力士だけであり、そこには「許された者」の証としての意味が込められています。本記事では、意外と知られていないまわし色のルールや、色が持つ心理的効果について深く掘り下げていきます。

  • 関取と幕下以下で異なる素材と色の決定的な違い
  • 協会が規定する禁止色とトレンドカラーの変遷
  • 洗うことが許されないまわしの手入れと管理方法

相撲のまわし(色)に隠された厳格なルールとは?階級別の違いを徹底解剖

大相撲の世界において、まわしは単なる競技用パンツではなく、力士の地位(番付)を視覚的に表す重要なステータスシンボルです。特に「色」と「素材」に関しては、日本相撲協会によって明確な線引きがなされており、十両以上の関取と幕下以下の力士では待遇が天と地ほど異なります。

私たちがテレビ中継で目にする色鮮やかなまわしは、厳しい出世争いを勝ち抜いた者だけに許される特権であり、そこに至るまでの過程には、黒一色の長い下積み時代が存在するのです。

関取と幕下以下の決定的な違い

十両以上の「関取」に昇進して初めて、力士は自分の好きな色のまわしを本場所で締めることが許されます。これは「締め込み」と呼ばれ、力士個人のトレードマークとして、ファンの記憶に強く刻まれる要素の一つとなります。

一方で、幕下以下の力士は、本場所の土俵上でも稽古場と同じ「黒色のまわし」を着用しなければなりません。この黒まわしは、まだ半人前であることを示すとともに、泥にまみれて稽古に励む若手の象徴でもあります。

また、関取が色付きのまわしを締められるのは本場所の取組時のみであり、日々の稽古では関取であっても「白色の稽古まわし」を着用します。つまり、力士のまわしは「本場所用の色付き(関取)」「本場所用の黒(幕下以下)」「稽古用の白(関取)」「稽古用の黒(幕下以下)」という4つの区分が存在するのです。

締め込みと廻しの素材の違い

色だけでなく、まわしの素材も階級によってはっきりと区別されています。関取が本場所で締める色鮮やかな締め込みは、最高級の「絹(シルク)」で作られており、美しい光沢と強靭な耐久性を兼ね備えています。

絹の締め込みは、新品の状態では非常に硬く、体に馴染むまでには時間がかかりますが、使い込むほどに力士の腰に吸い付くようなフィット感を生み出します。一本の価格は数十万円から百万円を超えるものもあり、まさに一流の証と言えるでしょう。

対照的に、幕下以下の力士や関取の稽古用まわしは「木綿(コットン)」で作られています。木綿のまわしは吸水性が高く、汗を大量にかく稽古や下積み時代の激しい取組に適していますが、絹のような光沢はなく、実用性を重視した作りになっています。

協会が定めている禁止色とは

関取になれば好きな色を選べるとはいえ、どのような色でも無制限に許可されているわけではありません。かつては「紺または紫系統」という規定が存在した時期もありましたが、現在ではかなり緩和され、多様な色のまわしが見られるようになりました。

しかし、現在でも明確に禁止されている色として「白色」が挙げられます。白はあくまで稽古用の色とされており、本場所の土俵で汚れのない白を着用することは、勝負の場に相応しくないと考えられているためです。

また、黒色は幕下以下の色というイメージがありますが、関取が本場所で黒の締め込み(絹製)を着用することは認められています。黒の締め込みは引き締まった印象を与え、強さを強調する色として、あえて選ぶ横綱や大関も少なくありません。

稽古用と本場所用の使い分け

前述の通り、関取は本場所と稽古場でまわしを使い分けますが、これには衛生面と精神面の理由があります。本場所用の絹の締め込みは、神聖な土俵入りの衣装としての側面も強く、汗や土で汚れることを極力避けるように扱われます。

一方、稽古用の白まわしは、激しいぶつかり合いによって日々汚れ、擦り切れていきます。関取にとって、白まわしが汗と土で茶色く変色していくことは、それだけ稽古を積んだという勲章でもあり、本場所への自信に繋がるのです。

幕下以下の力士は、経済的な理由もあり、稽古用と本場所用を兼用する場合がほとんどです。本場所の土俵に上がる直前に、使い込んだ黒まわしをきつく締め直す姿には、関取を目指すハングリー精神が宿っています。

行司や呼出の衣装との関係

まわしの色は、土俵上の他の登場人物である行司や呼出の衣装とも密接な関係があります。行司の装束や房の色は階級によって厳格に定められており、最高位の立行司は「紫」の房を使用します。

力士のまわし色が自由化された現代でも、行司や呼出の衣装と極端に被る色や、審判の判定を惑わせるような配色は避けられる傾向にあります。土俵全体が美しい調和を保つよう、暗黙の了解として色彩のバランスが意識されているのです。

また、テレビ映りを考慮し、照明に反射しすぎる素材や色は敬遠されることもあります。視認性の良さは、勝負の判定を左右する重要な要素であるため、派手さの中にも機能性が求められるのです。

力士が色を選ぶ基準と心理的効果

関取たちがまわしの色を決める際、そこには単なる「好み」以上の深い理由が存在します。勝負の世界に生きる彼らにとって、色は自身のメンタルをコントロールし、勝利を引き寄せるための重要なツールとなっているのです。

自身の四股名や出身地にちなんだ色を選ぶ力士もいれば、憧れの先輩力士と同じ色を選ぶことで力を得ようとする力士もいます。ここでは、力士たちがどのように色を選び、それが勝負にどう影響しているのかを解説します。

ゲン担ぎとラッキーカラー

相撲界は非常にゲン担ぎを重んじる世界であり、まわしの色選びにおいても「運気」が最優先されることが多々あります。連敗が続いた際や、怪我からの復帰場所などで、心機一転を図るためにまわしの色をガラリと変えることは珍しくありません。

例えば、風水や占い師の助言に基づいて「勝負運が上がる色」を選んだり、過去に好成績を残した場所で着用していた色に戻したりします。力士にとってまわしは戦闘服であり、自分を守ってくれるお守りのような存在でもあるため、信じられる色を身につけることが自信に繋がるのです。

また、昇進や優勝などの慶事があった後に、その記念として新しい色のまわしを新調することもあります。成功体験と結びついた色は、力士にとって最強の「ラッキーカラー」となり、その後の土俵人生を支える支柱となります。

四股名や出身地のイメージ

多くの力士は、自分の四股名(しこな)から連想される色をまわしに採用しています。「海」や「灘」がつく力士は濃紺や青系、「山」や「里」がつく力士は緑や茶系を選ぶといった具合に、名前と色のイメージを統一することで、ファンに覚えてもらいやすくする狙いがあります。

出身地の特産品や自然をモチーフにした色を選ぶケースも増えています。例えば、お茶の産地出身であれば鮮やかな緑色、海沿いの出身であれば深いオーシャンブルーなど、郷土愛をまわしの色で表現することは、地元後援会への感謝を示す手段ともなっています。

このように、まわしの色は単なる装飾ではなく、力士のアイデンティティそのものを表現するキャンバスと言えます。四股名と色が合致した力士は、土俵上での存在感が際立ち、観客の記憶に残りやすくなるのです。

昇進や改名時の変更タイミング

力士がまわしの色を変える最大のタイミングは、やはり番付が大きく動く時です。特に、新十両や新入幕、あるいは大関・横綱への昇進といった節目には、後援会から新しい化粧まわしと共に、新しい締め込みが贈られることが通例となっています。

また、四股名を改名した際にも、心機一転の意味を込めて色を変更することがあります。新しい名前と新しい色のまわしで土俵に上がることは、過去の自分と決別し、生まれ変わった姿をアピールする絶好の機会となります。

一方で、長年同じ色を使い続けることで、その色を自分の代名詞として定着させる力士もいます。「ピンクといえば◯◯関」「黄金色といえば◯◯関」といった具合に、色が力士のブランドイメージとして確立されることも、プロとしての重要な戦略の一つです。

最近の土俵を彩る人気カラートレンド

伝統と格式を重んじる大相撲の世界ですが、まわしの色に関しては時代の流れと共に流行が変化しています。かつては黒や紺が主流でしたが、カラーテレビの普及や高画質化に伴い、より鮮やかで個性的な色が好まれるようになってきました。

若手力士を中心に、従来の常識にとらわれない大胆な色選びが見られるようになり、土俵上の色彩は年々華やかさを増しています。ここでは、近年の大相撲におけるまわしのカラートレンドについて見ていきましょう。

伝統的な紺や紫からの変化

昭和の時代から平成初期にかけては、まわしの色といえば「紺」や「紫」、そして「エンジ」といった重厚感のある濃い色が王道でした。これらの色は、日本の伝統色として品格があり、力士の肌の色を引き立てて強く見せる効果があると信じられてきたからです。

しかし、近年ではこうした伝統色を選ぶ力士が減少しつつある一方で、より明るいブルーや鮮やかな赤など、発色の良い原色系のカラーが増加しています。これは、会場の照明技術の向上や、4K・8K放送などの映像技術の進化により、鮮やかな色がより美しく映えるようになったことも影響しています。

それでもなお、横綱や大関といった上位陣の中には、あえて伝統的な濃紺や深紫を選ぶことで、格の違いや威厳を表現する者もいます。流行に流されず、古き良き伝統を守ることもまた、一種のスタイルとして確立されているのです。

蛍光色やパステルカラーの流行

近年の最も顕著なトレンドは、蛍光色やパステルカラーといった、従来では考えられなかった色の台頭です。特に、若年層のファンや女性ファン(スー女)からの支持を集める人気力士たちが、ピンクやライムグリーン、スカイブルーといった明るい色を積極的に採用しています。

中でも「桜色(ピンク)」のまわしは、かつては敬遠されがちな色でしたが、人気力士が着用して活躍したことで一気に市民権を得ました。柔らかい印象を与えるパステルカラーは、力士の親しみやすいキャラクターを強調し、新たなファン層の獲得に一役買っています。

また、鮮やかな蛍光色は、遠くの席からでも一目で誰かわかるという視認性の高さもメリットです。土俵上で個性を爆発させる若手力士たちにとって、まわしの色は自己主張のための最強の武器となっているのです。

金色や銀色の装飾と制限

まわしの色として「金」や「銀」を選ぶことはできるのでしょうか。実は、締め込みとしての完全な金色や銀色は、素材の性質上(金属糸を織り込む必要があるため)硬くなりすぎて実戦には不向きであり、また「品位に欠ける」として敬遠される傾向にあります。

しかし、完全に禁止されているわけではなく、過去には金色の締め込みを着用した横綱も存在しました。ただし、現在ではあくまでアクセントとして、まわしの縁取りや刺繍の一部に金銀の糸を使用する程度に留めるのが一般的です。

一方で、土俵入りの際に着用する「化粧まわし」に関しては、金糸や銀糸をふんだんに使った豪華絢爛なデザインが主流です。戦うための締め込みは機能美を追求し、儀式のための化粧まわしは装飾美を追求するという、明確な使い分けがなされています。

知っておきたいまわしの手入れと変色

力士のまわしについて最も驚かれる事実の一つが、「まわしは決して洗わない」という掟です。神聖な土俵で使用する道具には神が宿るとされており、洗うことは「運を洗い流す」ことに繋がるため、どんなに汚れても水洗いすることはタブーとされています。

では、汗や土で汚れたまわしはどのように管理されているのでしょうか。ここでは、一般の常識とはかけ離れた、相撲界独自のまわしのメンテナンス方法と、使い込むことによって生まれる「味」について解説します。

洗わないまわしの管理方法

絹製の締め込みは、本場所での取組が終わるとすぐに陰干しされ、十分に乾燥させます。その後、専用のブラシやヘラを使って、表面に付着した砂や汚れを丁寧に落としていきます。水洗いができない分、この乾燥とブラッシングの工程が非常に重要になります。

さらに、除菌や消臭のために高濃度のアルコールを吹きかけることもありますが、基本的には「乾かす」ことが最大のケアとなります。長期間使用しない場合は、和紙に包んで桐箱に保管するなど、湿気対策を徹底してカビや劣化を防ぎます。

一方、木綿製の稽古まわしも基本的には洗いませんが、あまりに汚れが酷い場合や臭いが気になる場合には、例外的に洗濯することもあります。しかし、洗うと生地が柔らかくなりすぎて締め心地が変わってしまうため、多くの力士は洗わずに天日干しで対応しています。

色落ちや汗による経年変化

新品の時は鮮やかだったまわしの色も、長年使い込むうちに汗や脂、土俵の土が染み込んでいき、徐々に色が変化していきます。この変色は劣化ではなく、激しい戦いを生き抜いてきた証として「味」や「風格」と捉えられます。

特に鮮やかなブルーやピンクなどは、使い込むことで深みのある落ち着いた色合いへと変化していくことが多く、その過程を楽しむのも相撲ファンの醍醐味の一つです。逆に、変色が激しすぎる場合は、生地の強度が落ちているサインでもあるため、新しいまわしへの交換時期を見極める目安にもなります。

ベテラン力士のまわしが、新品のような鮮やかさではなく、くすんだ渋い色をしているのは、それだけ長く土俵に立ち続けてきた勲章です。まわしの色は、力士のキャリアそのものを物語っていると言っても過言ではありません。

引退後のまわしの行方

力士が引退した後、現役時代に使用していた締め込みはどうなるのでしょうか。基本的には個人の所有物であるため、思い出の品として自宅に保管したり、実家や後援会に寄贈して飾られたりすることが一般的です。

また、有望な後輩力士や弟子に「出世してほしい」という願いを込めて、自分の締め込みを譲り渡すケースもあります。名力士が使っていたまわしを受け継ぐことは、後輩にとって最大級の栄誉であり、その魂を引き継ぐという意味合いも持ちます。

一部の有名横綱や大関のまわしは、相撲博物館などに寄贈され、歴史的な資料として展示されることもあります。現役時代の激闘を吸い込んだまわしは、引退後も相撲文化を伝える貴重な遺産として大切に扱われ続けるのです。

観戦がもっと楽しくなる豆知識

まわしの色や素材についての知識が深まれば、本場所の観戦がより一層味わい深いものになります。土俵上の勝負だけでなく、力士の装具に込められた意味やこだわりを読み解くことで、相撲の新たな魅力が見えてくるはずです。

最後に、まわしに関連するいくつかの豆知識を紹介します。これらを知っておけば、テレビ観戦や現地観戦の際に、周りの人にちょっと自慢できるかもしれません。

化粧まわしと締め込みの違い

相撲に詳しくない人がよく混同するのが「化粧まわし」と「締め込み」の違いです。化粧まわしは、十両以上の関取が土俵入りの儀式でのみ着用する、前垂れがついた刺繍入りのまわしです。これはあくまで儀礼用であり、実際に相撲を取る際には使いません。

一方、本場所の取組で着用するのが「締め込み」です。化粧まわしは後援会から贈られることが多く、企業のロゴやキャラクター、風景画などが描かれた芸術作品のようなデザインが特徴です。締め込みは機能性を重視した単色、化粧まわしは装飾性を重視した柄物、と覚えておけば間違いありません。

また、化粧まわしの下には、実は締め込み(または専用の下まわし)を着用していることが一般的です。土俵入りが終わるとすぐに化粧まわしを外し、取組に向けて締め込み姿になる準備を整えるのです。

下がり(さがり)の色の決まり

まわしの前部分にぶら下がっている紐のようなものを「下がり(さがり)」と呼びます。この下がりにも階級による違いがあり、関取はまわしと同じ色の絹製で、糊で固められたピンと張ったものを使用します。

一方、幕下以下の力士の下がりは木綿製で、糊付けされていないためフニャフニャとしています。下がりの本数は規定されていませんが、土俵を割る(=負け)に通じる偶数を避けて、13本や17本などの奇数にするのが通例となっています。

取組中に下がりが外れることがありますが、これは行司が勝負の邪魔にならないように素早く取り除くため、あえて外れやすい構造になっています。下がりの色や張り具合を見るだけでも、その力士の階級やこだわりを確認することができるのです。

海外巡業での特別な対応

大相撲の海外公演などでは、現地の文化や色彩感覚に合わせて、普段とは異なる色のまわしや演出がなされることがあります。例えば、開催国の国旗カラーを意識したまわしを用意したり、よりショーアップされた要素を取り入れたりすることもあります。

しかし、基本的なルールである「関取は絹、幕下以下は木綿」という原則や、神聖な土俵を守るための礼儀作法は、日本国内と同様に厳格に守られます。異文化の中でも、相撲の伝統と品格を保ちながら、色の力で観客を魅了する工夫が凝らされているのです。

このように、まわし一つをとっても、そこには長い歴史と深い意味が込められています。次回の相撲観戦では、ぜひ力士の腰元に注目して、その色に秘められたストーリーを感じ取ってみてください。

まとめ

大相撲のまわしは、単なる道具ではなく、力士の階級、個性、そして覚悟を映し出す鏡です。関取だけが許される色とりどりの締め込みは成功の証であり、幕下以下の黒まわしは未来の栄光を目指すハングリー精神の象徴です。

まわしの色は、時代とともにトレンドが変化し、力士の心理やゲン担ぎによっても左右されます。しかし、その根底にある「神聖な土俵への敬意」と「自身のアイデンティティの表現」という役割は、いつの時代も変わりません。

次に相撲を観戦する際は、勝敗の行方だけでなく、力士たちが腰に巻いたその「色」に注目してみてください。なぜその色を選んだのか、その裏にあるドラマに思いを馳せることで、大相撲の世界がより深く、鮮やかに見えてくることでしょう。

 

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