大銀杏とちょんまげの違いとは?番付で決まる髪型のルールを解説!

大相撲中継を見ていると、力士によって髪型が異なっていることに気づいたことはありませんか。実はその髪型の違いこそが、力士の階級や地位を明確に示す重要なサインとなっているのです。

「大銀杏(おおいちょう)」と「ちょんまげ」は単なるファッションではなく、相撲界の厳格なルールに基づいた身分証明書のような役割を果たしています。この記事では、これら2つの髪型の決定的な違いや、それを支える職人技について詳しく解説します。

  • 大銀杏は十両以上の関取のみが結える格式高い髪型である
  • ちょんまげは幕下以下の力士や関取の普段の生活で結われる
  • 例外として幕下以下でも弓取り式などで大銀杏を結う場合がある

大銀杏とちょんまげの決定的な違い|髪型で分かる力士の階級!

相撲界には厳しい階級制度が存在し、その象徴の一つが「大銀杏」と「ちょんまげ」という2種類の髪型です。一見すると似ているように見えるかもしれませんが、その形状や結うことが許される条件には天と地ほどの差があります。

まずはこの2つの髪型の基本的な違いを理解することで、土俵上の景色がより深く楽しめるようになるでしょう。ここでは形状、資格、使用シーンなど、主要な違いを5つのポイントに分けて解説します。

形状の比較:イチョウの葉と筆の先

最も分かりやすい違いは、髷(まげ)の先端部分の形状にあります。大銀杏はその名の通り、髷の先が大きなイチョウの葉のように美しく扇状に広がっているのが特徴です。

一方、ちょんまげ(丁髷)は、束ねた髪を折り返して元結(もとゆい)で縛っただけのシンプルな形状をしています。ちょんまげの先は筆の先のように細くなっており、大銀杏のような広がりやボリュームはありません。

結える資格:十両以上の関取と幕下以下

大銀杏を結うことが許されるのは、番付が十両以上の「関取」と呼ばれる力士だけです。関取は力士全体の上位約1割しかいない選ばれた存在であり、大銀杏はまさに成功者の証と言えます。

これに対し、幕下以下の力士は原則としてちょんまげしか結うことができません。彼らは「力士養成員」と呼ばれ、関取を目指して修行中の身であるため、髪型においても明確な区別がなされているのです。

着用シーン:本場所の土俵と普段の生活

実は関取であっても、24時間365日ずっと大銀杏を結っているわけではありません。大銀杏を結うのは、本場所の土俵に上がる時や横綱土俵入り、千秋楽パーティーなどの公式行事に参加する場合に限られます。

稽古中や普段の生活においては、横綱や大関といったトップ力士であっても、機能的なちょんまげを結って過ごします。つまり、大銀杏はハレの日の正装であり、ちょんまげは日常のスタイルという使い分けがなされているのです。

施術時間:熟練の技が必要な大銀杏

2つの髪型は、完成までにかかる時間や手間も大きく異なります。ちょんまげは比較的短時間で結うことができますが、大銀杏は髪を一枚の葉のように広げる高度な技術が必要なため、完成までに15分から20分程度かかります。

大銀杏を結う際は、大量の鬢付け油(びんつけあぶら)を使い、専用の櫛や道具を駆使して髪の毛一本一本の流れを整えます。この複雑な工程を経ることで、激しい取組でも崩れにくい堅牢で美しい髷が完成するのです。

歴史的背景:武士の髪型から相撲独自の進化

大銀杏とちょんまげは、どちらも江戸時代の武士や町人の髪型をルーツに持っています。ちょんまげは江戸時代に広く一般的だった「本多髷」などが簡略化されたもので、当時の男性の標準的なヘアスタイルでした。

大銀杏は、江戸時代の「銀杏髷」を力士の体格に合わせて大きく派手に強調したものが起源とされています。明治時代に入ってから現在の形が定着し、関取の威厳と格式を示す特別な髪型として継承されてきました。

関取の証である大銀杏の特徴|美しさを支える床山の職人技

大銀杏は単なる髪型ではなく、日本の伝統美が凝縮された芸術作品とも言えます。その美しいフォルムを作り出すのは、「床山(とこやま)」と呼ばれる髪結いの専門職人たちの熟練した手仕事です。

関取が土俵入りで見せる凛々しい姿は、力士本人の努力だけでなく、床山との二人三脚によって支えられています。ここでは大銀杏の構造や、それを結う床山の世界について詳しく見ていきましょう。

大銀杏の構造:髷尻と前髪のバランス

大銀杏の美しさは、髷の先端である「刷毛先(はけさき)」の広がりだけではありません。頭頂部に乗った髷の根元である「髷尻(まげじり)」の引き締まりと、額にかかる前髪のバランスが重要です。

特に前髪をふっくらと膨らませることで、力士の顔立ちをより勇壮に見せる効果があります。この絶妙なバランスは、力士の顔の形や頭の形に合わせて微調整されており、床山の美的センスが問われる部分でもあります。

床山の階級と大銀杏を結う資格

力士に番付があるように、床山にも特等から五等までの6つの階級が存在します。原則として大銀杏を結うことができるのは、技術が認められた一等や二等以上のベテラン床山が中心となります。

一人前の床山になり大銀杏を美しく結えるようになるまでには、10年以上の修行が必要だと言われています。横綱や大関の大銀杏は、特等床山や一等床山といった最高ランクの職人が担当することが慣例となっています。

髪質と長さ:大銀杏を結うために必要な条件

大銀杏を結うためには、ある程度の髪の長さと量、そしてコシのある髪質が必要です。髪が短すぎたり少なすぎたりすると、綺麗な銀杏の葉の形を作ることができず、髷が崩れやすくなってしまいます。

スピード出世で十両や幕内に昇進した若手力士の場合、髪の伸びが追いつかず、関取になっても一時的にちょんまげのままで土俵に上がることがあります。これは大銀杏を結うための物理的な条件が整っていないためであり、特例として認められています。

幕下以下の力士が結うちょんまげ|シンプルさにある機能美

華やかな大銀杏の陰に隠れがちですが、ちょんまげもまた相撲界にとって欠かせない伝統的な髪型です。幕下以下の力士にとって、ちょんまげは日々の稽古に励むための戦闘服のような意味合いを持っています。

シンプルだからこそ、結い手の技術や力士の髪質が誤魔化しなく表れるのがちょんまげの特徴でもあります。ここでは、この質実剛健な髪型に込められた機能性や歴史について掘り下げてみましょう。

ちょんまげの正式名称と歴史的な由来

一般的に「ちょんまげ」と呼ばれていますが、正式な名称は「丁髷(ちょんまげ)」と書きます。この名前は、結った髪の形が漢字の「丁(てい)」の字や、記号の「ゝ(ちょん)」に似ていることに由来するという説が有力です。

江戸時代には身分を問わず広く結われていた髪型ですが、現在では相撲界にのみその伝統が残っています。かつては頭頂部を剃る「月代(さかやき)」を作っていましたが、現在の力士は総髪で結うのが一般的です。

激しい稽古に耐える実用性と耐久性

ちょんまげの最大の特徴は、その高い実用性と耐久性にあります。毎日の激しいぶつかり稽古で頭を擦り付け合っても、シンプルな構造であるため崩れにくく、また崩れてもすぐに結い直すことができます。

また、頭部の保護という観点からも重要な役割を果たしています。束ねた髪と鬢付け油がクッションとなり、立合いの際の衝撃や転倒時のダメージを軽減するヘルメットのような機能を担っているのです。

髪が伸びるまでのザンバラ髪との区別

新弟子として入門したばかりの力士は、まだ髪が短く髷を結うことができません。この状態の髪型は「ザンバラ髪」と呼ばれ、まずはちょんまげを結える長さに伸ばすことが最初の目標となります。

髪が伸びて初めてちょんまげを結ってもらった時の喜びは、力士にとって特別なものです。それは単に髪型が変わるだけでなく、大相撲の力士として一人前への第一歩を踏み出したという自覚が芽生える瞬間でもあります。

髪型にまつわる相撲界の厳格なルール|例外や断髪式の意味

相撲界のルールは絶対的なものが多いですが、髪型に関してもいくつかの興味深い例外規定が存在します。これらの例外を知ることで、番付表だけでは分からない力士の役割や事情が見えてきます。

また、力士人生の最後に行われる断髪式においても、大銀杏は特別な意味を持っています。ここでは、知られざる髪型の特例ルールや儀式における役割について解説します。

十両昇進が決まった瞬間の髪型変更

幕下から十両への昇進が決まると、その力士は次の場所から大銀杏を結うことが許されます。しかし、実際には番付発表の日や昇進伝達式のタイミングに合わせて、床山が初めての大銀杏を結う練習を始めることが多いです。

初めて大銀杏を結った姿で報道陣の前に現れる新十両力士の表情は、緊張と誇らしさに満ちています。この瞬間こそが、厳しい修行を乗り越えて関取の座を掴み取った証であり、多くの力士が憧れる晴れ舞台なのです。

弓取り式など幕下力士が特例で結う場合

原則として幕下以下は大銀杏を結えませんが、特定の役割を与えられた場合には特例として認められます。その代表例が、全取組終了後に勝者の舞を演じる「弓取り式」を担当する力士です。

弓取り力士は通常、幕下以下の力士が務めますが、土俵上での儀式のために特別に大銀杏を結って登場します。他にも、巡業での「初っ切り(しょっきり)」や「相撲甚句」を披露する際にも、演出の一環として大銀杏が許可されることがあります。

引退時の断髪式で大銀杏を切る意味

力士が引退を決意し、土俵を去る際に行われるのが断髪式です。この儀式では、最後の大銀杏を結い、それを親方や関係者が少しずつ鋏を入れて切り落としていきます。

たとえ引退時に番付が幕下以下に落ちていたとしても、かつて関取を務めた経験があれば、断髪式では大銀杏を結うことが許されます。大銀杏を切り落とすことは、力士としての魂を天に返し、一般社会人として新たな人生を歩み出すための厳粛な通過儀礼なのです。

大相撲観戦がもっと楽しくなる豆知識|髷に注目して見よう

ここまでは大銀杏とちょんまげの制度的な違いを見てきましたが、実際の取組や会場においても髪型に関する面白い発見があります。髷は単なる装飾ではなく、勝負の行方や会場の雰囲気にも影響を与える要素です。

観戦時に少し視点を変えて力士の頭部に注目すると、今まで気づかなかった新しい相撲の魅力が見えてくるはずです。最後に、明日誰かに話したくなるような髷にまつわる豆知識を紹介します。

取組中に髷が崩れた場合の勝敗ルール

激しい攻防の中で、稀に力士の髷が解けてザンバラ髪になってしまうことがあります。しかし、髷が解けたこと自体で反則負けになることはなく、基本的にはそのまま相撲が続行されます。

ただし、髷が解けて髪が顔にかかり、視界が遮られることで勝負に不利になるケースはあります。また、極端に見苦しい状態になった場合は、行司の判断で「まわし待った」のように一時中断し、身なりを整えさせることも理論上はあり得ます。

力士の香りを作る鬢付け油の秘密

相撲会場や力士が近くを通った時に漂う甘い香りは、髷を結うために使われる「鬢付け油」の香りです。これは植物性の木蝋(もくろう)に菜種油や香料を混ぜて作られた、相撲界独自の整髪料です。

この香りは「オーミすき油」という特定の商品によるもので、独特の甘いバニラのような香りが特徴です。この香りを嗅ぐだけで相撲を連想するファンも多く、まさに大相撲の空気感を形成する重要な要素となっています。

髷を掴む反則行為とその判定基準

相撲の禁じ手の一つに「髷を掴む」行為があります。故意に相手の髷を掴んで引き倒したり、動きを止めたりすることは反則であり、即座に負けが宣告されます。

判定の基準は厳しく、指が髷の中に深く入ったり、髷の根元を握ったりした瞬間に反則とみなされます。大銀杏やちょんまげは急所である頭部を守る役割もありますが、同時に相手にとっては掴んではいけない聖域として、勝負の駆け引きに緊張感を与えているのです。

まとめ

大銀杏とちょんまげは、相撲界における厳格な階級社会を視覚的に表す重要なシンボルです。十両以上の関取のみに許される大銀杏は、その美しさと格式で力士の威厳を示し、幕下以下が結うちょんまげは、修行中の身であることを示す機能的な髪型です。

しかし、単なるルールの違いだけでなく、そこには床山の職人技や、断髪式に込められた力士の想いなど、深い歴史と文化が息づいています。次に大相撲を観戦する際は、ぜひ力士の髷にも注目してみてください。その形状の違いから、土俵にかける男たちのドラマを感じ取ることができるはずです。

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