「三役(さんやく)」という言葉をニュースや大相撲中継で耳にしたことはありませんか。
力士の番付において、三役は実力者としての証であり、給料や待遇が一気に変わる重要な分岐点です。
しかし、具体的にどこからどこまでが三役なのか、平幕と何が違うのかを詳しく知る人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、相撲界における三役の定義から、厳しい昇進条件、そして知られざる特権までを徹底解説します。
- 三役の正確な定義と範囲
- 平幕とは段違いの給料事情
- 昇進と陥落のリアルな条件
三役という地位の重みを知れば、毎場所の取組がさらに熱く、面白く感じられるはずです。
まずは、三役の基礎知識からしっかりと押さえていきましょう。
相撲の三役とは?定義や構成される役職を解説
大相撲における「三役」とは、番付の上位に位置する特定の役職を総称する言葉です。
一般的には「大関・関脇・小結」の3つを指しますが、現代の使われ方には少し特殊な事情があります。
狭義と広義の違いについて
三役という言葉には、歴史的な背景に基づく「本来の意味」と、現代の運用における「慣習的な意味」の2通りが存在します。
本来の意味(広義)では、文字通り「大関・関脇・小結」の3つの役職すべてを含んで三役と呼びます。
しかし現代(狭義)では、大関が特別な地位として扱われるため、大関を除いた「関脇と小結」の2つを指して三役と呼ぶことが一般的です。
ニュースなどで「新三役」と報じられる場合は、初めて小結(または関脇)に昇進したケースを指しています。
関脇(せきわけ)の役割
関脇は、横綱・大関に次ぐ第3位の地位であり、次期大関候補として最も期待されるポジションです。
定員は最低2名(東と西)と決まっていますが、成績優秀者が多い場合は3名以上に増員されることもあります。
大関昇進を目指すには、この関脇の地位で継続して高い勝率を維持することが絶対条件となります。
毎場所のように優勝争いに絡む実力が求められるため、「大関取りの起点」とも呼ばれる重要な地位です。
小結(こむすび)の役割
小結は三役の中で最も低い地位ですが、平幕(前頭)とは明確に一線を画す「エリートの入り口」です。
関脇と同様に定員は最低2名で、平幕の上位で勝ち越した力士の中から選抜されます。
横綱や大関との対戦が初日から組まれることが多く、勝ち越すこと自体が非常に難しい「試練の地位」と言えるでしょう。
ここで実力を証明できた力士だけが、関脇、そして大関への道を切り開くことができます。
大関(おおぜき)の特殊性
大関は三役の筆頭であり、かつては力士の最高位とされていた歴史ある地位です。
現在では横綱に次ぐNo.2の座ですが、関脇以下とは異なり、負け越しても即座には陥落しない「カド番」という制度で守られています。
この特権的な待遇の違いがあるため、現代では「三役」という括りから大関を別格扱いすることが増えました。
とはいえ、番付上の分類としては依然として三役の中に含まれるのが正式なルールです。
三役の定員と変動ルール
三役(関脇・小結)の定員は、あわせて最低4名(東西の関脇・小結)と定められています。
ただし、大関から陥落した力士や、平幕で著しい好成績を残した力士がいる場合、枠が拡大されることがあります。
これを「張り出し」と呼んでいましたが、現在は番付の枠内に書き込まれる形式に統一されました。
実力主義の相撲界において、三役の座は常に変動し、限られた椅子を巡る激しい争いが繰り広げられています。
三役と平幕の給料や待遇の格差
力士が三役に昇進すると、名誉だけでなく経済的な待遇も劇的に向上します。
ここでは、平幕(前頭)と三役の間にある具体的な給料の差や、待遇の違いについて見ていきましょう。
月給の大幅なアップ
日本相撲協会の規定によると、場所ごとの給金とは別に支給される月給において、三役と平幕には明確な差があります。
2025年時点のデータに基づく目安として、平幕の月給は約140万円ですが、三役(関脇・小結)になると約180万円に跳ね上がります。
これは月額で40万円、年収ベースではボーナスを含めると数百万円単位の増額となる計算です。
さらに大関になれば月給は約250万円となり、地位が上がるごとに収入の桁が変わっていくのが相撲界の現実です。
ボーナスと報奨金の違い
月給以外にも、年2回支給される賞与(ボーナス)や、本場所ごとの手当にも格差が設けられています。
三役力士は協会の顔としてイベントや巡業でも重要な役割を担うため、出演料や手当の面でも優遇される傾向にあります。
また、勝利するたびに積み立てられる「持ち給金」の加算ペースも、上位力士ほど早くなる仕組みです。
長く三役を務めることは、現役時代の収入だけでなく、引退後の功労金にも大きく影響します。
移動や生活面での待遇
金銭面だけでなく、移動や日常生活における待遇も三役になると変化します。
例えば地方場所や巡業への移動において、三役以上の力士はより快適な座席クラスや移動手段が手配されることが一般的です。
また、支度部屋でも入口に近い場所や広いスペースを与えられるなど、暗黙の了解として序列が守られています。
これらの待遇差は、「もっと上に行きたい」という力士たちのハングリー精神を刺激する重要な要素となっています。
三役への昇進条件と陥落のルール
三役の座を掴むためには、単に勝ち越すだけでなく、運やタイミングも味方につける必要があります。
ここでは、昇進に必要な具体的な条件と、一度掴んだ座を失う陥落のルールについて解説します。
平幕からの昇進目安
平幕から小結(三役)に昇進するための基本的な条件は、上位の平幕で勝ち越し(8勝以上)を決めることです。
特に「前頭筆頭」で勝ち越せば、翌場所の三役昇進はほぼ確実とされています。
ただし、現在の三役枠に空きがない場合は、小幅な勝ち越しでは昇進が見送られるケースも稀に存在します。
逆に、三役に空きが多い場合は、前頭3枚目や4枚目からでも二桁勝利などの好成績を挙げれば抜擢される可能性があります。
関脇と小結の入れ替え事情
小結から関脇への昇進も、基本的には勝ち越しが条件となりますが、ここには「関脇の定員」が大きく関わります。
関脇の枠が空いていれば8勝7敗でも上がれますが、関脇が現役で埋まっている場合、小結で10勝以上しても昇進できないことがあります。
これを「留め置き」と呼び、実力者がひしめく場所では頻繁に起こる現象です。
逆に、関脇で負け越せば即座に小結や平幕へ陥落するため、維持すること自体が極めて困難です。
大関昇進への高いハードル
三役の中でも別格の大関に昇進するには、「三役の地位で直近3場所合計33勝以上」という非常に高い基準が存在します。
これは平均して毎場所11勝以上すること意味し、安定して優勝争いに加わる強さが求められます。
また、単に星数だけでなく、相撲内容や品格も審査対象となるため、33勝しても見送られる場合があります。
この厳しい審査をクリアして初めて、口上を述べて大関へと推挙されることになるのです。
三役と平幕における対戦環境の違い
三役になると、給料が上がる一方で、土俵上での戦いは過酷さを極めます。
ここでは、対戦相手の質やスケジュールなど、競技面における環境の変化について掘り下げます。
上位総当たりの過酷な日程
三役力士の最大の特徴は、初日から中日(8日目)にかけて、横綱や大関全員と総当たりで対戦することです。
平幕下位であれば同ランクの相手と当たりますが、三役は休む間もなく最強クラスの相手と連戦を強いられます。
この期間に連敗してしまうと、精神的にも追い込まれ、後半戦で立て直すのが難しくなります。
多くの新三役力士が「上位の壁」に跳ね返され、1場所で平幕に逆戻りするのはこのためです。
求められる精神力と責任
三役は「協会の看板」の一角であるため、無様な相撲は取れないというプレッシャーが常にのしかかります。
変化(立ち合いで相手をかわすこと)や引き技ばかりで勝つと、観客や審判部から厳しい評価を受けることもあります。
「三役らしい相撲」という暗黙の美学に応えつつ、結果を出さなければならない葛藤は相当なものです。
この重圧に耐え抜いた力士だけが、真の実力者として大関への道を歩むことを許されます。
千秋楽の「三役揃い踏み」
三役以上の力士(あるいはそれに準ずる成績上位者)だけが経験できる特別な儀式に、「三役揃い踏み」があります。
これは千秋楽の結びの3番に限って行われるもので、東方と西方それぞれの力士が土俵上に3人ずつ並び、四股を踏む儀式です。
テレビ中継でも映し出される華やかな舞台であり、これに参加することは力士にとって大きな名誉とされています。
実力だけでなく、千秋楽まで優勝争いや上位戦線に残っていなければ味わえない晴れ舞台です。
三役に関する知っておきたい豆知識
最後に、三役に関する歴史や、相撲通なら知っておきたい豆知識をいくつか紹介します。
これらを知っておくと、大相撲の歴史や文化をより深く味わうことができるでしょう。
「小結」という不思議な名前の由来
「小結」という名称は、かつて大相撲を取り仕切っていた「結び」という役職に由来すると言われています。
昔は「結び」の補佐役として「小結」が存在し、それが次第に力士の番付名として定着しました。
「小さく結ぶ」と書きますが、その役割は番付と番付(上位と下位)を結ぶ重要なポジションという意味も込められています。
地味な名称に見えますが、実は組織の要となる深い意味を持った伝統ある称号なのです。
行司や呼出にもある「三役」
実は、力士だけでなく、行司や呼出(よびだし)にも「三役格」という階級が存在します。
三役格行司は、結びの一番の数番前を裁くベテランであり、銀色の装束や房を使用することが許されています。
彼らもまた、若手の頃から厳しい修行と昇進争いを経て、その地位に辿り着いたスペシャリストたちです。
土俵上の力士だけでなく、それを支える裏方たちの「三役」にも注目してみると面白いでしょう。
三役在位の記録と名力士
歴史上には、大関には届かなかったものの、長期間にわたり三役の座を守り続けた「名脇役」が存在します。
彼らは「万年関脇」や「三役の主」などと呼ばれ、時には横綱をも苦しめる実力者としてファンに愛されました。
大関になれなかったから弱いのではなく、強豪ひしめく時代に三役を張り続けたことこそが勲章と言えます。
記録に残る三役在位数は、その力士がいかに長く、高いレベルで安定した強さを誇っていたかの証明なのです。
まとめ
大相撲の「三役」について、定義や待遇、昇進の厳しさなどを解説してきました。
記事のポイントを整理します。
- 三役とは一般的に「関脇・小結」を指すが、正式には大関も含む
- 給料は平幕に比べて月額40万円近くアップし、待遇も大きく向上する
- 昇進には平幕上位での勝ち越しが必要だが、定員の関係で運も左右する
- 初日から横綱・大関との総当たりとなるため、勝ち越す難易度は極めて高い
三役は、力士として一人前と認められた証であると同時に、トップレベルの戦いへの入り口でもあります。
次の場所からは、優勝争いだけでなく「誰が三役を守れるか」「誰が新三役になれるか」にも注目してみてください。
番付表の数センチの違いに懸ける力士たちのドラマを知れば、大相撲観戦がより一層味わい深いものになるはずです。


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