大相撲の弓取り式とは?意味や由来を知り結びの一番後も楽しもう!

大相撲中継を見ていると、結びの一番が終わった後に、一人の力士が土俵に上がり弓を振る姿を目にします。
あれは一体何のために行われているのでしょうか。

「弓取り式」と呼ばれるこの儀式には、単なるパフォーマンス以上の深い歴史と意味が込められています。
今回は、弓取り式の由来や作法、担当する力士の選び方について詳しく解説します。

  • 勝者の舞としての本来の意味
  • 名手・聡ノ富士の引退と現在の担い手
  • 万が一弓を落とした時の驚きの対処法

弓取り式とは?本来の意味と儀式としての役割

弓取り式とは、大相撲の本場所ですべての取組が終了した後に行われる儀式のことです。

これは、その日の「結びの一番」の勝者に代わって、作法を心得た力士が土俵上で弓を受け、勝者の舞を演じるものです。

もともとは千秋楽にのみ行われていましたが、1952年からは毎日実施されるようになりました。
弓を振る動作には、邪気を払い、土俵を清めて翌日の相撲につなげるという重要な意味が込められています。

勝者の代わりに舞う儀式の起源

弓取り式の起源は、平安時代に行われていた「相撲節会(すまいのせちえ)」にまでさかのぼります。
当時、相撲に勝った力士には褒美として弓矢が与えられており、その喜びを表すために弓を持って舞ったのが始まりとされています。

現在では、結びの一番を戦う横綱や大関が自ら舞うことはなく、代理の力士が務める形式が定着しました。
しかし、その精神は「勝者の舞」として脈々と受け継がれており、一日の相撲を締めくくる大切な儀式となっています。

聡ノ富士など名手が魅せる技の数々

弓取り式を行う力士は、単に弓を回すだけでなく、高度な技術と美しい所作が求められます。
特に2025年まで長きにわたり弓取りを務めた聡ノ富士(伊勢ヶ濱部屋)は、その巧みなバトンのような弓さばきで「レジェンド」と称されました。

彼の引退後は、天空海(立浪部屋)や朝乃若(高砂部屋)といった関取経験のある実力者や、各一門の若手がその伝統を受け継いでいます。
重量感のある力士が軽やかに弓を操る姿は、本割の取組とはまた違った相撲の華やかな魅力を感じさせます。

千秋楽だけじゃない?行われるタイミング

かつては千秋楽のみの特別な行事でしたが、現在では初日から千秋楽まで毎日行われています。
NHKの大相撲中継では放送時間の都合でカットされることも多いですが、千秋楽の放送では最後まで映されることが一般的です。

現地で観戦する場合は、結びの一番が終わってもすぐに席を立たず、この弓取り式まで見届けるのが「通」の楽しみ方です。
櫓太鼓(やぐらだいこ)が鳴り響く前の静寂の中で行われる儀式は、独特の緊張感と美しさがあります。

弓を落としたらどうする?意外な作法

弓取り式の最中に、万が一弓を落としてしまった場合、手で拾うことは厳禁とされています。
相撲において「手がつく」ことは「負け」を意味するため、非常に縁起が悪いとされるからです。

もし落としてしまった場合は、足の甲に弓を乗せ、器用に跳ね上げて空中でつかみ取るという高度なリカバリー術が決められています。
滅多に見られない光景ですが、この作法もまた、勝負の世界に生きる力士たちの矜持を表しています。

髪型は大銀杏?格好の決まりごと

弓取り式を務める力士は、幕下以下の地位であっても、この時だけは特例として大銀杏(おおいちょう)を結うことが許されます。
また、化粧まわしを着用して土俵に上がるため、関取と同等の格式高い姿を見ることができます。

ただし、この化粧まわしは本人所有のものではなく、部屋の関取や後援会から借りたものを使用するのが一般的です。

華やかな化粧まわしと大銀杏姿で舞う姿は、未来の関取を夢見る力士にとっても晴れ舞台といえるでしょう。

弓取り式を行う力士の選び方と条件

弓取り式を務める力士は、誰でもなれるわけではありません。
基本的には、その時の横綱がいる部屋、または同じ一門の力士から選出されるという不文律があります。

これは、弓取り式が本来「横綱(勝者)の代理」という意味合いを持つため、横綱の身の回りの世話をする付け人が務めることが多いためです。
ここでは、その選定基準や例外について詳しく見ていきましょう。

幕下以下の力士が選ばれる理由

弓取り式は、原則として幕下以下の力士が担当することになっています。
関取(十両以上)になると、自身の土俵入りや取組、付き人への指示などで多忙になり、弓取り式の準備をする時間が確保しにくいためです。

また、幕下以下の力士にとっては、テレビに映り名前を覚えてもらえる貴重なチャンスでもあります。
弓取りを務めることで度胸がつき、その後に関取へと出世する力士も少なくありません。

横綱がいる部屋から選出される原則

最も優先されるのは、横綱が所属している部屋の力士です。
横綱土俵入りで太刀持ちや露払いを務めるのと同様に、弓取り式も横綱を支える重要な役割の一つとみなされています。

もし横綱の部屋に適任者がいない場合は、同じ一門の部屋から選ばれることもあります。
横綱が不在の時期や休場している場合でも、この原則に基づき、一門の中で持ち回りで担当者が決められることが多いです。

元関取が務める異例のケース

近年では、関取経験者が番付を下げて幕下以下になった際に、弓取り式を務めるケースも増えています。
2024年の朝乃若や、2025年の天空海などがその代表例であり、相撲ファンの間で大きな話題となりました。

彼らは「関取に復帰してからも弓取りを続けたい」と語るなど、この役割に誇りを持っています。
ベテランの実力者が務めることで、儀式の格調高さが増し、観客にとっても見応えのある時間となっています。

歴史から紐解く弓取り式の変遷

弓取り式は長い歴史の中で、その形式や意味合いを少しずつ変化させてきました。
伝説的なエピソードから江戸時代の記録まで、過去を知ることで現在の儀式がより深く理解できます。

ここでは、織田信長にまつわる有名な説や、現在のスタイルが確立された経緯について解説します。
伝統文化としての相撲の奥深さを感じてみてください。

平安時代の相撲節会との関係

前述の通り、弓取り式のルーツは平安時代の宮中行事「相撲節会」にあります。
当時の相撲は農作物の豊凶を占う神事であり、勝者に弓矢を与えることは、神の力を授かることを意味していました。

この時代の「勝者の舞」は、現代のような派手なパフォーマンスではなく、より厳かで宗教的な儀式だったと考えられています。
時代を経て、相撲が武士の鍛錬や庶民の娯楽となるにつれ、儀式の形も変化していきました。

織田信長が弓を与えた伝説の真偽

弓取り式の起源としてよく語られるのが、織田信長にまつわるエピソードです。
1570年(元亀元年)の上覧相撲で、信長が勝者の宮居眼左衛門に自らの弓を与え、彼が喜びのあまり舞ったのが始まりという説があります。

これはあくまで俗説の一つであり、史実としての確証はありませんが、相撲を愛した信長らしい逸話として親しまれています。
いずれにせよ、武士の時代においても弓が勝利の象徴として扱われていたことは間違いありません。

江戸時代に確立された現在の形式

現在のような形式の弓取り式が定着したのは、江戸時代に入ってからです。
伝説的な強さを誇った横綱・谷風梶之助が弓を受けたという記録が残っており、この頃から専門の作法が整備され始めました。

江戸時代の大相撲興行において、弓取り式は観客を楽しませるための重要な演出の一つとなりました。
今日我々が見ている所作の多くは、この時代に完成され、代々の力士たちによって口伝で継承されてきたものです。

実際の作法と見どころを徹底解説

弓取り式の動作には、一つ一つに意味があり、美しい流れとして構成されています。
ただ漫然と見るのではなく、その所作の意味を知ると、力士の技術の高さに驚かされるはずです。

ここでは、土俵への上がり方から退場まで、一連の流れにおける見どころを紹介します。

次回の観戦では、ぜひ細かい手の動きや足運びにも注目してみてください。

土俵への上がり方と弓の受け取り

弓取り力士は、呼出しに導かれて土俵に上がります。
行司から弓を受け取る際も、単に手渡されるのではなく、恭しく礼をして受け取る作法があります。

この時、力士は柏手を打ち、塵手水(ちりちょうず)を切って身を清めます。
弓を手にした瞬間、力士の表情が引き締まり、会場の空気も一変する瞬間です。

四股と弓を振る動作の美しい連動

弓取り式の最大の見せ場は、四股(しこ)を踏みながら弓を大きく振る動作です。
右手に持った弓を頭上で旋回させたり、体の周囲で八の字に回したりと、ダイナミックな動きが続きます。

特に「弓を抜く」と呼ばれる動作は、土俵上の邪気を掘り起こして払う意味があります。
東の力士が勝った場合は東から、西の場合は西から弓を動かすなど、勝敗によって微妙な違いがあるのも興味深い点です。

納めの動作と退場の際のマナー

一通りの舞が終わると、力士は弓を納め、再び行司あるいは呼出しに返却します。
最後に深く一礼をして土俵を降り、花道を引き揚げるまでが弓取り式です。

観客からは「よいしょ!」という掛け声や大きな拍手が送られます。
この一体感こそが、本場所の一日を締めくくる最高のフィナーレといえるでしょう。

弓取り式にまつわる豆知識とエピソード

最後に、弓取り式に関するちょっとした豆知識を紹介します。
報酬や地方巡業での違いなど、意外と知られていない裏話を知れば、相撲通の仲間入りができるかもしれません。

力士たちの待遇や、本場所とは違うリラックスした雰囲気など、違った側面から弓取り式を楽しんでみましょう。

弓取り力士には手当が出るのか

弓取り式を務める力士には、日本相撲協会から特別な手当が支給されます。
具体的な金額は公表されていませんが、幕下以下の力士にとっては貴重な収入源の一つです。

また、手当以上に「弓取りを務めた」という名誉は、力士としてのキャリアに大きな箔をつけます。
親方や後援者からの信頼も厚くなり、引退後のセカンドキャリアにも良い影響を与えることが多いようです。

本場所と巡業での違いはあるか

本場所では厳格な作法に則って行われる弓取り式ですが、地方巡業では少し雰囲気が異なります。
巡業では、ご当地出身の力士が務めたり、ファンサービスの一環として少しアレンジを加えたりすることもあります。

また、巡業ならではの「初切(しょっきり)」などの余興と合わせて楽しむことができるのも魅力です。
本場所の緊張感とはまた違った、和やかな弓取り式を見ることができるのも、巡業へ足を運ぶメリットの一つです。

まとめ

弓取り式は、単なる終了の合図ではなく、相撲の歴史と精神が凝縮された神聖な儀式です。
勝者の代理として舞う力士の姿には、伝統を守り抜く誇りと、観客への感謝が込められています。

聡ノ富士という名手が土俵を去った後も、新たな力士たちがそのバトンを受け継ぎ、日々技を磨いています。
次回の観戦では、ぜひ結びの一番の余韻に浸りながら、弓取り式の美しさを堪能してください。

テレビ観戦の方も、千秋楽には最後までチャンネルを変えずに、この伝統の舞を見届けてみてはいかがでしょうか。
そこには、勝負の厳しさとは対照的な、相撲文化の優雅さと奥深さが広がっているはずです。

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